Please, give it back 代わりなんていないよ

片岸の嫁、実咲(当時二十四歳)が失踪したのが二〇〇〇年。
「実咲とは大学の民俗学サークルで知り合ったんだ。そのまま卒業後に結婚した」ので、結婚生活は二年ほど。
なので、大学に入学したのが一九九四年と思われる。

領怪神犯が頻繁に起こるようになったのと六原兄妹が村を出たこと、彼女が「知られずの神」によって失踪したこと、何かしらの因果関係があるのかもしれない。

片岸は三度、「知られずの神」に消された人たちが暮らす場所に来ている。
その度に彼女と会ったことを忘れて戻るなんて、哀しい限りである。
しかも、である。
彼女の故郷の問題を解決したというのに、連れて変えることもできなかった。
なんと切ないのだろう。

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