天国も地獄も神も、人が作った
- ★★★ Excellent!!!
あまりロックに詳しくはない私ですが、展開を追うごとに、ふと思い出す名前が色々とありました。
ジミ・ヘンドリックスもシド・ヴィシャスも、若くして亡くなっているな、と。
勿論、全てのロッカーは若くして亡くなるなんて事はないですし、薬物に手を出すという事もないです。そもそもロックに「こうでなければならない」なんて制約はないのだから、そういう目で見るのは侮辱的な行為です。
しかしながら思ってしまうのは、ロックに決まった型はないという究極の自由が、究極の牢獄となってロッカーを苦しめる事もあるんだろうな、という事でした。
様々なプレッシャーがある事は想像に易く、メジャーデビューとなればファンが作る神というイメージがつきまとう事も、簡単に想像できます。
作中でも主人公は先輩を神と呼び、憧れを口にしてしますが、この神というのは厄介なもので、等身大の自分と食い違う事があっても演じなければならないものと感じます。
ファンは神を作り、栄光に満ちた天国も作ってくれるけれど、まるで牢獄のような地獄も作ってしまう…そんな事を感じさせられる短編です。
でも最後、主人公が先輩の後を継ぐかのようにステージに立つ姿は、そんな残酷な想像をしてしまう中盤を塗り替えて、ハッピーエンドにしてくれました。