誰もが特別でありたいと思いながら、足掻くのだけど。でも。

デザインの仕事、デザイナーしてるの?
なにそれ、カッコいい!!
……たぶん、そういう職業に就いていると、そういう声を掛けられがちで。だけど、その内情は、デザイナー、と一括りにされても、その職場、そのひとによりさまざまであって。そして時にそれは、ひとに特別感を持たれるからこそ、孤独で過酷なものになってしまう。
ただでさえ個性が持て囃される世の中です。仕事だけでなく、個人としても、どこか自分は特別でいたい。そう自信を持ちたい。そう思ってしまうことはままあります。
でも、それが仕事の本質から目を逸らして、本来あるべき作業をただの自尊心の上書きにしてしまうとしたら、本末転倒なんですよね。
でも、わかってるんですよ、そんなこと言われなくとも。でも。でも。普通でいたくない。だけど、だけども。
この作品の主人公からはそんな逡巡を感じました。そしてそれゆえ、とても身近に感じました。
主人公がそんな心持ちで彷徨う物語の末、見つけたものは何なのか。
ぜひ、読んでください。ひとの在り方に対するひとつの答えが、ラストにはふわりと現れます。それがとても希望に満ちたものに感じるのは、わたしだけでしょうか。

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