「頑張れ、ススラハ!」
多くの読者はそう言ったという。
あなたもきっと、読み進めるうちに、そう言いたくなってしまうだろう。
◆
ボーイズラブ。
多くの作者が書くのは、おそらく性癖を──誤用の意味で──詰め込んだ作品だろう。
要素×要素×要素。キャッチーなタイトルにべたべたの甘いスナックのような展開。
そんな物に食傷気味の読者にはぴったりなのが今作品である。
ファンタジーを基盤とした、大空が広がるかのような展開の数々。
ちょっと笑ったり、手に汗を握ったり。
コレは、ただのボーイズラブではない。主人公・ススラハを中心とした人間ドラマだ。
もちろん、ボーイズラブ要素が無いというわけではない。
「爪を塗る」という行為、ソレこそ今作において最も心を交わす行為であると筆者は感じた。
回を追うごとに重みが増していくこの行為に、どこか扇情的なものを見るかもしれない。
何より素晴らしいのは、主人公・ススラハを応援したくなる気持ちにさせてくれることである。
最初こそ物語の中のキャラクターかもしれない。しかし、話数を重ねるごとに、彼はきっとあなたの読書の旅のお供となってくれているだろう。
最終回まで目を離さないでほしい。
あなたがのめり込むなら、この不思議で魅力的なパチパチ弾ける飴のような作品はきっとあなたを招き入れることだろう。
この世界には塗爪師という職業がある。戦に赴く者に魔力をも込めて爪を塗る仕事だ。ただそれは女の仕事とされる。
対して塗爪師のススラハは男。それゆえに職の当てがなかったがそんな彼を雇ったのは騎士団長のティバルラ。しかしはティバルラには爪がないーー。
ファンタジー世界で繰り広げられるこの設定にまずときめきます。爪を塗り、塗られる関係って個人的にすごくエロティックだと思うのですが、確固たる職業としてそれがある世界でふたりの男はどんな関係を築いて行くのか。固唾を飲んで見守りたいです。
とにかくいまは「名づけるように爪を塗るのは生の肯定」とティバルラに告げるススラハに痺れています。