デザインの仕事、デザイナーしてるの?
なにそれ、カッコいい!!
……たぶん、そういう職業に就いていると、そういう声を掛けられがちで。だけど、その内情は、デザイナー、と一括りにされても、その職場、そのひとによりさまざまであって。そして時にそれは、ひとに特別感を持たれるからこそ、孤独で過酷なものになってしまう。
ただでさえ個性が持て囃される世の中です。仕事だけでなく、個人としても、どこか自分は特別でいたい。そう自信を持ちたい。そう思ってしまうことはままあります。
でも、それが仕事の本質から目を逸らして、本来あるべき作業をただの自尊心の上書きにしてしまうとしたら、本末転倒なんですよね。
でも、わかってるんですよ、そんなこと言われなくとも。でも。でも。普通でいたくない。だけど、だけども。
この作品の主人公からはそんな逡巡を感じました。そしてそれゆえ、とても身近に感じました。
主人公がそんな心持ちで彷徨う物語の末、見つけたものは何なのか。
ぜひ、読んでください。ひとの在り方に対するひとつの答えが、ラストにはふわりと現れます。それがとても希望に満ちたものに感じるのは、わたしだけでしょうか。
修景施設のための製品を作る会社に入り三年目の悩めるお嬢さん、鈴木留衣さんがこちらのお話の主人公となります。
三年目。
見えなかったものが見えてくる時期。
これと言える不満もなく、仕事に少し余裕が出来てきて仕事を、自分を見つめる時間が増えてくる時期でもあったりします。
同期の友達との違い、自分の目指している場所。
それらが頭を巡り、惑う中、上司から受けたコンペ参加の提案。
自分を、仕事を見つめ直し進もうとする彼女の姿に、自分を重ねる方も多いのではないでしょうか?
そんな彼女は果たしてどんな結果を出していくのか?
そしてそれに対しどんな答えを彼女が出したのか?
是非皆さまも『自分だったら?』と考えながら読んで欲しい。
そんな作品なのです。
こちらの物語は、企業に属する入社3年目の女性プロダクトデザイナーの短編の物語です。
その主人公留衣と、上司である哲のやり取りでストーリーが進んでいきます。
「デザイン」をするに当たっての制作の裏側を見ることも出来て、読んでいてとても勉強にもなりました。
そして、仕事の上で、全ての創作物が評価されるように、彼女自身も「デザイン」上の評価や、自身と他人を比べたり、劣等感を抱いたりして、もやもやな心を持ちながら話が進んでいきます。
デザイナーだけではなく、創作される方皆様に共感できる部分ではないかと思います。
そこで、彼女は公園のベンチのデザインコンペを担当することになり、前向きに試行錯誤をしていくのですが、そこで思わぬ大失敗をして留衣はかなり凹んでしまいます。
その後のラストの上司の哲の言葉がもう胸に突き刺さりました。
最高に泣きました。
創作をしていると、誰もが留衣のように、自分には創作の才能なんてないかもしれない、この世にはこんなに創作者が溢れてるし、私がやらなくてもいいかもしれない、必要とされいていないのかもしれない。
このように思う時があるのではないかなと思います。
そうやってくじけそうになった時、また何度でも読みに来たいと思うほど、この哲という上司の最後の言葉に救われるかと思います。
自分だけで前を向けるようになれれば一番いいのですが、それって結構しんどかったり難しかったりする時期って必ずあると思うのです。
そんな時に誰かの暖かな言葉に励まされたりしながら、少しずつ自分と向き合って創作を楽しめるようになってもいいと思うのです。
とても励まされて、人の暖かさにも触れることが出来る素晴らしい「デザイン」の物語でした。
悩める色んな創作者の皆様にもぜひ読んでいただきたいなと思います。