真の恐怖とは……。狂気に満ちた悪意。

 人間の背後につきまとう黒い靄のような生霊がみえてしまう不思議な能力を持つ女子高生。
 主人公が背後に生霊をみた人は、変死を遂げてしまいます。

 心霊系のホラー小説かと思って拝読し始めましたが、隣に引っ越してきた男子高校生の背後にも黒い靄のような生霊がみえ、主人公は彼のことを気にかけるようになります。

 男子高校生を救ってあげたくて……。
 当初はそんな感情だったのかもしれません。
 読者もきっとそう思ったでしょう。
 私自身もそうでした。

 その男子高校生に一方的に想いを寄せられた主人公。男子高校生の好意は次第にストーカーのようになり、狂気に満ちてきます。

 このあたりから、物語は急展開になります。

 まるで残酷なサスペンスホラー映画を観ているような、拉致、監禁、暴行、殺人未遂、目をそむけたくなるような残虐な描写に、真の恐怖とは生霊ではなく生きている人間のなす悪行ではないかと……。

 どんどんエスカレートする狂気に満ちた犯罪は、果たして生霊に取り憑かれたせいなのか。

 ――それとも……。

 ラストに目撃するのは、目を疑いたくなるような黒い靄のような生霊の正体でした。

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