生霊『探し』の意味

このレビューを読んでいるあなたは、他人に強い感情を抱いたことがあるだろうか?

期待を裏切られたことへの失望、目の前から消し去りたいほどの殺意。嫉妬、羨望。あるいは狂おしいほどの情念。
人間は誰しも、大なり小なりそういった負の感情を持ち合わせ、折り合いをつけながら生きていると私は思う。
そういった意味では、この物語に出てくる登場人物達はきっと『どこにでもいる』のだろう。
ただ、折り合いをつけ、内で留めていたものが外れてしまっただけで……。

この話は、生霊が視えるという以外はどこにでもいそうな少女の視点から始まる。
生霊とは何か、彼女とどう関わってくるのか。
読者はそれを息を潜めながら読み進めるだろう。だが、油断してはいけない。
詳しくは本編を読んで体感してほしいが、この物語はある時を境に読者の世界が反転する。

息をつく暇もないほどに狂気の世界に引きずり込まれ、気がつけば最後の一文まで読み進めているはずだ。
そして、最後まで読んだ後にどうして作者がこの物語のタイトルを『生霊』ではなく『生霊探し』としたのか考えてほしい。
誰が、なぜ、探すのか。
込められた意味に気がつく時、きっともう一度ゾクリとするはずだ。


そうして、きっとあなたも背後を確認したくなるだろう。

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