敗者の歴史こそ美しい

敗者の歴史は、勝者によって捻じ曲げられ、隠ぺいされる。
後世にその歴史に光を当てる者が現れるまでは。
新選組の歴史は、既に多くの大作家によって光を当てられているが、やはり土方や沖田のような著名な人物に目が向けられているのは否めない。
そんな中で作者は、藤堂平助という歴史の脇役といえる人物に傾倒し、光を当てている。
藤堂はおそらく、幕末という動乱の時代に生きた、普通の人々の代表なのではないかと思われる。
その普通の男が、歴史の激流の中で否応なく変わっていく姿を、作者は自身の憧憬を込めて描いているのではないだろうか。
そして敗者の側に立った普通の男にも、人間としての生き様があり、若者ゆえの悩みもあり、そしてこの作品のテーマの一つでもある淡い恋もある。
それを思うと、敗者の歴史こそ美しいというパラドックスについて、考えざるを得なくなる。
小難しい屁理屈を並べてしまったが、まずは作品を楽しもう。

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