揺蕩う……たゆたうと読みます。
これは物語をつづる創作者にあてた不思議な手紙だと思いました。
書き手である私だけでなく、物語を創作した作者自身への手紙でもあり。
のらりくらりと揺蕩う語り部の言葉、そのふわふわとした綿菓子のような言葉の中に切れ味鋭いカミソリが潜んでいる。
しかしカミソリかと思ったら、それは柔らかいゴムのフェイクだったりして。
つかみどころがないようで、その尻尾は鼻先にぶら下がっていて、つかんだと思ったらつかんでなくて。
これはさまざまなイメージを読み手に喚起させる装置・システムだったのだと思いました。
言葉と遊びながらいろいろ考えさせられる不思議な空間。
ぜひこの空間に迷子になりに来てください!
タイトルは、『二十四逝記』ですが、その名の通り、未来の二十四世紀を示すようでいて、春、夏、秋、冬と四季を巡り、二十四節気も辿っております。
その為、全二十四話です。
章タイトルとエピソードタイトルがよくできており、章タイトルは、例えば、『冬の寄港;死の淵へダイブする』と洒落ています。
紀行、寄稿、寄港と掛けている訳ですね。
中は、まるで詩のようですが、散文です。
ジャンルは、現代ファンタジーとなっております。
邯鄲の夢のような鼻提灯から始まって、啓蟄にときめいたり、リアルの流行にまで触れ、私も大好きなお菓子のお話に、創作上の綴りスイッチなどの創作論も交えて、銀河を語り、古(いにしえ)の音が聴こえて来たりととてももりもり満点な作品です。
科学的なものとファンタジックなものとリアルなものが織り交ぜてあり、化学反応を起こして、素敵な作品に仕上がっております。
ルビの振り方がとても特徴的で、相当見識が深く洞察も優れた作者様ならではの魅力に溢れております。
贅沢な一品、是非、ご一読ください。
四季折々、さまざまな場所へ寄港しながら寄稿を繰り返すセンチメンタル・ジャーニー。
その旅の語り手は『時空を揺蕩う放浪者』。
ユニークな言葉遊びや捻りの効いたルビを駆使して、読者を深遠なる思考の果てへと誘ってくれます。
終始とぼけた語り口でのらりくらりと読者を翻弄しつつ、時にハッとする真実を折り込みヒヤリとするようなアイロニカルな視点を垣間見せる。読んでいるうちに、思考の枠が溶けて無くなり時間が伸び縮みするような、不思議な感覚に陥るかもしれません。
いざ、魅惑的な銀河の旅へ。甘いお菓子とビターな珈琲を手に、ゆるりと出航してみませんか?
銀河のどこかで漂う仙人が四季を通して思考の旅をする、センチメンタル・ジャーニー。ちょっととぼけた口調が楽しく、取っつきやすく読みやすい。
ひとつのエピソードは短くさっくり読めるサイズですが、必ずどこかにフムとうなずかせる箇所があり、印象に残るフレーズがあります。浮遊するような言葉遊びの中に、チラリと本音の流れ星が光る。しかしそれもまた嘘か真か、仙人にはぐらかされてしまいそうな流動感。まさに季節も人もすべてが流れゆくもの。
広い銀河で少し独特な色をして光っている星のような、そんな作品だと思いました。
四季をさらにそれぞれ六等分。
二十四節気とともに、どこかの(誰かの)銀河を巡る、仙人っぽい(たぬきっぽい?)書き手による創作論エッセイです。
ちょっとした創作のつぶやきが、作者お得意の「愉快でお洒落なダジャレ」「美味しそうな『おかしな話』」で読者を不可思議な宇宙空間へと誘います。
美しい言葉の数々は、詩のような印象でもあります。
一万文字を二十四分割ですので、エピソードひとつひとつはほっと一息つく間に読み終えてしまいます。
息抜きに、ゆったりとした言葉遊びを楽しみながら、二十四通りのセンチメンタルな旅をいかがでしょう。