旅を経て、少しだけ大人へ

短編小説『川の主が死んだ』の続編となる作品です。
新たに川の主となった元人間の魂『節』が、出雲大社へと赴き、神としての名前を賜るまでが綴られます。
生前は世間を知ることのできなかった節が、死後に神となったことから一般社会の常識や知識を吸収していく姿は「良かったね」という思いを抱くと同時に、どこか寂しさもありました。まさに詫び寂びですね。
少し遠出な旅の中で、戦後日本の雰囲気を味わいつつ、目新しいものへ興味を示したり、無邪気に喜ぶ節の姿が微笑ましかったです。しかし終盤では『嫉妬』の感情が芽生え、少女が大人へと変貌する様子が、人から神へと変わる展開とも重なり、物語として実に巧みな構成だと思いました。
短編を読んだ人には、是非とも続編となる今作も読んで頂きたいです。

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