呪いが炙り出す、人間の弱さと強さ。ゾクゾク全開の、業と愛の物語です。

故郷で亡くなった幼馴染みは、「鬼」に祟り殺されたのだ……という衝撃的な幕開けから。村を襲う変死現象に立ち向かうべく、村の伝説に迫る物語。

とにかく、話運びが抜群に面白いです。
凄惨な怪奇現象も怖ければ、「この人も信じられない!?」が連続する人間模様も怖い。インパクト大の展開が序盤から次々と起こり、そのたびに興味も膨れ上がっていきます。陰惨でありつつも加速感の強い、地獄のジェットコースターに心を鷲掴みにされます。

推理・解明パートが入ってくると。民俗学や日本史をフィーチャーしての、「因習」に対する新たな解釈も展開されます。超常的な現象を含みつつも、絶妙に「近いことは実際あったかも」を刺激する筋書きがお見事でした。

後半の展開について言及は控えますが。
この物語の真骨頂は、呪いや恐怖によって明らかになる人間の心理だと思います。
真実が明らかになるたびに、そこに秘められた人間の心情も炙り出されます。

恐怖心ゆえに、弱さゆえに、人間がこれほど残酷になってしまう……その一方で。
愛ゆえに、想いの強さゆえに、土壇場で他者に寄り添えるのも人間です。

優しくはないかもしれない、綺麗とも言いがたい、それでも狂おしく強い「愛」が秘められた物語でもあります。
個人的には、幼馴染みの少女たちが辿る結末が……こんな苦しい百合があるかよお……(嗚咽)

……ごほん。
とにかく、抜群に面白いホラーであり、ミステリーであり、ロマンスでもあります。みんなが寝静まる頃、どっぷりと一気読みしてみるのがオススメです。

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