紹介から想起するような、強烈なキャラクターたちが織りなすハイテンションなコメディ――としても抜群に楽しいのですが、それだけではなくて。
過去の失敗や家庭事情、大切な人との別れなど、それぞれに切実な苦悩を背負った部員たちがいます。部活自体も、とある事情からの衰退を経験しています。そんな彼らが、想いをぶつけ合いながらも共に「再生」を目指していくドラマは、等身大の重さと、それ以上の温かさで胸を震わせてくれます。
音楽モノとしての魅力もバッチリです。独奏、パート合奏、全体合奏とスタイルが変わっていく中での感覚の違いや、楽器との向き合い方が克明に伝わってきますし、メンバーごとの適性や意識の違いも面白いです。
大勢でひとつの曲を奏でることの楽しさも怖さも、ステージの魔法をあらゆる角度から描く筆致はお見事です。
そして、現代日本を舞台としながらも、ファンタジックな要素が組み込まれているのも印象的です。しかも、シナリオで相当に重要な部分に。主人公に隠されていそうな秘密が気になってなりません、どんな転換が待ち受けているのやら。
……などと紹介してきましたが、やはりキャラクターたちの賑やかさは非常に眩しい魅力です。しょっちゅう笑わせてくれるし、推しが見つかるでしょうし、近くにいたら絶対に楽しい。友達になりた……だから楽器ケースを振り回したり高速拘束したりしないで君たちは!
「一緒に奏でる音楽は楽しい」――その喜びを追いかける彼らを、共に追いかけてみませんか?