パラレルゲンガー
ふるなる
第1話 アストニッシュドッペルマン
喫茶店の一角でパソコンを開いた。
太陽の陽射しが優しく入ってくる。風は弱く雲一つない。今日は特段と清々しい。
頼んだカフェラテを軽く啜る。
早くレポートを書き上げなければいけない。明日に迫った宿題の提出日に俺は追われてた。
ひたすら手を動かしていく。
カチャカチャカチャ。時々、ラテを口に入れて、再びキーボートに指をのせる。
ガシャン。
嫌な音が聞こえた。ガラスの割れた音だ。思わず音のした方へと体を向けた。
四人組の女子高生の前で尻もちをついて倒れているアルバイトの女の子。きっと高校生にぶつかって尻もちをついた途端にコップを落としたのだろう。
この状況に後悔してか彼女は視線を真下に向けて顔を隠している。そのまま言葉を紡いでいる。店員として落第点の対応だ。
高校生の二人が倒れた彼女を起こそうと近寄った。しかし、彼女は軽く抵抗する。それでも成り行きが彼女を立たせた。
そこにクレームが飛び出しそうな感じはしない。このまま穏便に終わるのだろう。俺は体を戻して画面を睨んだ。
「ねぇ、あの学生さんと倒れてたバイトの子、すごく似てない。」
その言葉が耳に入った。
すぐに彼女らの方向を向く。
店内に広がるコソコソ話。それらが集まり大きな音となる。
「もしかしてドッペルゲンガーじゃないの?」
ほとんどの噂がそれだった。
よく見ると、やはり二人の容姿も雰囲気も似てるものがある。
「嫌だ。死にたくない。」
アルバイトの女の子が透明になっていく。
数分も経たない内に彼女は消滅した。
騒然とした店内。この中じゃ集中できない。
残りのカフェラテを飲んでいく。
体が求めていた量を越して飲んだせいか途中から味がしなくなった。
どこかからの囁き声から、いつの間にか喧騒のような騒がしさとなった。ここは居心地が良くない。早く退出しよう。
上書き保存をしてパソコンを閉じる。
荷物をリュックに入れて、すぐに席を後にした。
出入口への合間に女子高生の近くを通り過ぎた。
「まさかドッペルゲンガーと会うなんてね。」
「ほんとビックリだよ。ほんとに急でビックリしたー。もう会うことはないけど、向こうの私も可愛かったね。」
「何その自意識過剰。後、あんたは会えるじゃん。ドッペルゲンガーが消滅したら死後は本物とずっと一緒に過ごすんだって知らないの?」
そんな話し合いを耳にした。
死んだことに抵抗はない。
このことは、この世界じゃ、もう、当たり前になった現象に過ぎない。罪悪感も本当に薄くなってきている。
清々しいと思ってた外も、実際は暑くて鬱陶しいだけの嫌々しいものだった。
落ち着いた場所でレポートを終わらそうと思っていたのに、行きつけの喫茶店は騒がしくなってしまった。他に勉強が捗る場所を考える。
数秒後、家しかないな、という答えに導かれた。
そのまま見慣れた道を、ただボーッとしながら歩いていった。
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