第4話 恋対責任(れんたいせきにん)

 勇気をふりしきって告白することにした。

 場所は俺の家の前。

 例えば遊園地の観覧車とか。夕焼け空の崖とか。スポーツカーの中とか。そんな洒落た場所でやる力も勇気も思考もなかった。

 彼女と初めて出会ったココで俺は彼女を振り向かせた。

「あの……さ。言いたいことがあって。」

「どうしたの。」

「いや、やっぱり何でもないや。」

「えーっ、何それ。何言いかけたの。すごく気になるんだけどー。」

 急に現れる羞恥。思わず想いと言葉を塞いだ。それに対して彼女は強引に開こうとする。

 それにやられ、俺は閉じた口を開いた。

「……初めて出会ってからもう何ヶ月になるのかな。ひょんなことから一緒に住むようになって、そして、趣味が同じで、毎日が楽しくて。」

「それで。」

「好きという気持ちが抑えられなくなって。だから。」

「好きです。付き合ってくださいって?」

 先に言われてしまった。

 思わず肯定できなくなった。と言っても、否定なんて一切できない。俺はポカンとあんぐり口を開いた。

「違った?」

 その言動が一々可愛い。

「違うなら否定してよ。否定しないの?」

「ごめん。否定なんて……できないよ。」

「図星なんだ。」

 ああ、図星だ。

 俺には言葉や行動のレパートリーが少ない。この恋もこの状況となっては簡単には伝えられなかった。

「私も好きなんだ。君のこと。付き合ってください。」

 まさの逆告白。

「お、俺も──」

「知ってるよ。だって、先にそう言おうと思ってたんでしょ。ほんと可愛いね。」

 嬉しさで時間が遅く遅くなっていく。

 時間が止まっていくように錯覚していた。


 二人の関係は赤い関係になった。

 これからはより公にその関係を濃くできるし、より踏み込んだこともできる。

 今日の夜はすやすや眠れそうだ。

 まだ夜中までは時間があり過ぎる。はやく夢の中で幸せの海に沈んで溺れたかった。

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