鞭愛とともに、知られざる東京の顔を垣間見る

幼い頃から筋金入りの鞭好きである筆者の、リアリティに満ち満ちた「フィクション」。鞭とのなれそめから発展してディープな世界を体験していく過程がとても具体的に描写してあり、読む者を誘うように引き込みます。
エピソードの数々も面白いのですが、何より感じるのは、東京という街の特異さ──それは大都会という表の顔に潜む、蠢くような多面的な裏側の顔ですが──この時代の空気が、あたかもそこにいるかのようにビシビシ感じられます。鞭愛のみならず、時代風俗を切り取った作品としても面白く、この時代の東京を生きた方には旧懐を誘い、ご存じでない方にはかなり興味深いのではないでしょうか。
そういう意味では貴重なアーカイブとも感じました。
読みやすく笑いが端々にあってとても楽しめました。

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