落ち零れは負け組じゃない

物語は、主人公《五十土五奇》が登校中に倒れた男性を見つけるところから始まる。そのとき、五奇の日常はすでに後戻りできないものになっていた。
倒れた男性の安否が分からないまま、今度は安心できる場所であるべき自宅に異変がおこる。そこにはいつもと様子の違う父親と異様な姿の──長い金髪を三つ編みにし、ピンクのロリータドレスを着た──女がいた。
その後、五奇は師匠とも呼ぶべき人物と出会い、退魔師を志すことになる。その先には仲間との出会いがあり、その仲間が一癖も二癖もあるわけだが、全員共通して落ち零れだった。
もうこれだけで続きが読みたくなるはずだ。

序盤から謎に満ちた出来事が巻き起こるため、否応なく物語に引き込まれる。和風な世界観を土台にしたファンタジーである本作は、王道といって差し支えない。だが、オリジナリティがないかというとそんなことはない。

特筆すべきは、作者のネーミングセンスと物語の展開の良さだ。
キャラクターの名前や技名がいちいちカッコいい。口に出して言ってみたくなるものばかりだ。
そして、主人公を始め、仲間たちが抱える事情や葛藤が絶妙に交差しながら進んでいく物語は、1話1話の長さがそれほど長くはないにもかかわらず読み応え抜群だ。

是非とも多くの方にお勧めしたい作品である。

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