落零〈rakurei〉~おちこぼれ達の退魔伝~
河内三比呂
序章 立志編
第1話 その日は
――その日はちょっと変わった朝だった。
まさか、あんなことが起こるなんて……。
****
(父さんは休みだけど、俺には学校があるんだよなあ……)
こんがり焼けたトーストを食べながら、男子高校生、
休みなのだから自分が朝食を作ると言う提案は、父に却下された。曰く、「お前は料理が下手だから」と。
(俺……そんなに下手かなぁ……?)
確かに、
そんなことを考えていると、あっという間に登校時間が迫っていた。
「あ、父さん。俺、もう行くわ。ごちそうさまでした!」
それに気付いた
「慌ただしい奴だな……。気を付けて行ってこいよ!」
「わかってるって……行ってきます!」
父への返事もそこそこに、
「
すると、
「なんだよ。急いでんだけど?」
「……墓参り。帰ってきたら行くぞ」
父の言葉に、靴紐を結んでいた手が止まる。
「えっ? だって、母さんの命日は今日じゃないだろ?」
思わず
「今日は、父さんと母さんの結婚記念日なんだよ。……わかったな?」
「あ、う、うん」
父の気迫に
****
(そっか……結婚記念日、か……)
まだ高校一年生である
(でも、きっとかけがえのないものなんだろうな……)
そう思いながら、
「ん? なんだアレ?」
茂みから人の足のようなものが見えた。
「あ、あのー大丈夫ですか?」
茂みをかき分けてみると、そこにはグレーのスーツを着た四十代くらいの男性があおむけになっていた。
「ううっ」
小さく声を漏らす男性を見て、
「どこか怪我でも……? あ、あの! 救急車呼びますんで!」
そう声をかけながら、スマホを取り出すと、男性が手で制止した。
「うっ……待ってくれ……。秘書に連絡を、して、くれないか?」
言われて手渡されたのは名刺だった。そこには『
「えっ、でも! あの、市長さんなら尚更……」
「頼む……。あまり
市長に
「あの!
『そうですが、どなたでしょうか?』
ひと通り話を聞いた電話の相手、
『状況はわかりました。
「任せるって言っても……」
『問題ありません。もう着きましたから』
「えぇ!?」
辺りを見渡せば、黒いバンが一台公園に着いたのが見えた。そのドアが開き、濃い緑のパンツスーツに金髪のお団子ヘアの女性が現れた。
ヒールを響かせながら、こちらへあっという間に寄ってきた女性は
「感謝致します。ワタクシが先程電話を頂いた
「は、はい……」
(いくらなんでも……俺への態度ヒドくないか?)
不満を抱えつつも、遅刻確定であることを悟った
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