第2話 失われた日常
遅刻した
なんの部活にも入っていない
(今日は変わった日だなぁ)
という感情以外思い浮かばなかった。ため息を
「ただいまー父さん。……父さん?」
──何かがおかしい。
(……静かすぎないか? 父さん、家にいるときはテレビつけっぱなしなのに)
「とう……さん? どこに、いるんだ、よぉ~?」
弱々しい声で父を呼びながら、隣の
「父さん! いるならいるって言ってくれ……よ? えっ?」
しかし、そこにいたのはいつもの優しく頼れる父の姿ではなく。
虚ろな目、正座をしながらも宙をさまよう両手、そして……。
「
ただただ亡き母の名前を呼ぶその声に、
(はっ? え、何が起こっているんだ?)
声を出すまでに数分かかった。
「父さん! しっかりしてよ、父さん!」
だが、反応は全く返ってこない。
「な、なんだよ! なんだよこれ!?」
「おっかえり~♪待ってたよぉ~♪もぅ! あまりにも遅すぎたから、
慌てて父から視線を外し、リビングの方へと向き直ると、そこには長い金髪を三つ編みにし、ピンクのロリータドレスを着た若い女がいた。
「あ、ボク可愛いでしょ? でもね~男なんだよね♪お・と・こ♪」
現実離れしたこの状況の中で、彼は不気味なほど陽気かつフレンドリーに、
(怖い……なんだよ、コイツ……)
いまだ母の名を呼ぶ父を
「なんなんだよ! お前が父さんをこんな風にしたのか!?」
「うん、そうだよ? どう? イイ感じでしょ?」
「なっ!?」
悪びれるどころか笑顔で答えた男は、あっという間に
「うん、その顔もいいな~♪ その赤みがかった茶髪といい……左目の泣きぼくろといい……。キミ可愛いね?
「はっ?」
(殺す? 殺される? 俺が?)
思わず相手の目を見れば、悪意しか感じない笑顔が返って来た。
「ん~? なあに?」
(本気だ……本気で、殺す、気だ)
脳が理解した途端、
(どうしよう? どうしたらいい?)
パニックになっている間にも、男はとてつもなく
「じゃあまずは、その心から殺してあげようかな~♪」
あっさり告げると、胸元から振り子を取り出し、
「う、うぅ……うわぁああああ!?」
あまりの痛さに、思わず両手で頭を押さえれば、男は不思議そうに首をかしげる。
「ありゃりゃ? もしかしてキミ、
男の目に鋭い光が宿る。だが、
「はぁ……はぁ……一体なにが?」
目に涙を浮かべながら
「大丈夫かい? 少年」
優しく声をかけられたが、なにが起こったのか理解できず、
「さて、どうしようか?」
先程まで余裕ぶっていた男は表情を変えて、たいそうつまらなそうな顔をする。
「あ~あ~。トクタイかぁ……。お兄さんは好みじゃないし、撤退するかなぁ~。じゃあね~♪」
それだけ言い残すと、黒い影に包まれてロリータドレスの男は姿を消した。
「えっ!?」
驚く
「空間転移持ちだったか。逃げられたね、どうするかなぁ。……君も、そちらの男性も無事じゃなさそうだね?」
立て続けに色々起こったため、返事ができない
「立てるかい?」
その途端、
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