第3話 退魔師
「うっうぅん?」
「目が覚めたようだね? 自分の名前、わかるかい?」
どこまでも優しくて心地いい声が、逆にあの出来事が現実だったのだと理解した。男は、
「もう一度
「……
ようやく答えた
「
「そんな!」
なんとか上半身を起こし、ベッドから出ようとする
「おっとと! まだ起きてはいけないよ? 君は"
聞きなれない単語に、思わず
「"
男は優しく
「まず、ここは"
「なっ……あの父さんが? 壊されたって、どういう!?」
「簡単に言うなら、自我がない状態かな?」
(信じられない! 信じたくない!!)
だが、あの時の父の姿を
「もう元には戻れないだろうね。人の心と言うものは、一度壊れてしまえば戻ることなどないのだから。それでだよ? 君は、このままでいいのかい?」
「いいわけ、ないだろ!」
その言葉を聞いて、男が深く
「
「"
「そうさ。あぁ、そういえば自己紹介がまだだったね? 僕はルッツ。しがない
男、いやルッツは優しくもう一度
「お父さんの
「……そもそも"
とうとう耐え切れなくなった
「"
問われた
「……なります。俺、
****
(あそこから始まったんだな)
あれから三年の月日が経った。ルッツを師として修行を積んだ
時刻は午後八時をまわった頃。
腰に
一つは、
どちらも扱いに慣れるまで時間がとてもかかった。だからこそ、愛着もあるし信頼も置いている。
「よし! 行くか」
一人呟くと、
「こちらが試験会場になります。受験者は並んで入ってください!」
指示に従い会場内に入って行けば、中には百人ほどの若者達が、広い闘技場のような場所に一同に集まっていた。
(すごい人数だな……。ここから残れるのは、半分か)
定員は五十人。その事実に、自然と姿勢を
「うぉ!?」
衝撃でふらつきながら、押してきた相手を見れば、そこには桃色のショートヘアに金眼の、目つきがやたらと鋭い、同い年くらいの少女がいた。
少女はこちらに気づくと、睨みながら、予想より低い声で威圧してきた。
「あぁ? 俺様になんか文句でもあんのか?」
その声色に、
『これより、試験を開始します。受験者の皆様は、このライトが照らしている方向にご注目下さい』
言われた通りに視線をやれば、しばらくして身体が宙に浮くような感覚に襲われて、ゆっくりと意識が遠くなる。
『それでは各自の健闘を祈ります』
どこまでも無機質なアナウンスが耳に残った。
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