砂漠渡りと長月

砂漠を渡る人々のガイドをしながら生活をしている少年・アージオは、悪霊が現れる危険な季節に、チヒロという少女とエルフのシンディを案内することになる。
異世界を舞台に、勇者ではない少年の冒険を描いたファンタジー。異世界転生物は数あれど、こういう切り口は新鮮でした。
たとえ勇者が巨悪と戦ってくれるとしても、普通の人たちは手をこまねいているだけでいいのかと考えさせられます。袖振り合うのは一瞬だけでも、それぞれに忘れられない出会いと別れになったと思います。

　物語の１話目と２話目、またそれぞれの前半と後半では趣きが全く変わる物語です。
　つまり一粒で四度おいしい。
　しかも二つの自主企画のお題を、一作でこなしてしまうという欲張り設計です。

　起承転結がはっきりしててお手本のような短編。
　個人的には、漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の第７部『スティール・ボール・ラン』の砂漠のシーン(確か『悪魔の手のひら』とかいう名前の呪いというかなんというか)とか、ドラゴンクエストⅢの砂漠のシーンを思い出しました。
　作者の新巻へもん様は、見せ方というか煽り方がホント上手い。
　第１話目を読んだ時点では、
「これ、次で完結するのかな？」
と思ったし。
　第１話の…続きを読む

ほとんどの人は勇者でも、世に名の響く人間でもない。

砂漠を案内する主人公の少年は、どこにでもいる、でも、とってもいい子で、真面目で、ちょっとズルいところもあるけれど、必死に生きている。

そんな彼が出会った、異世界から来た人。

ネタバレがするのでこれ以上はかけないのですが、カクヨムで活躍する多くの異世界ファンタジーの人々の影で、こういう人たちがいるって、リアルに描かれています。

お読みください。