魅力的な敵達に少年少女が立ち向かう、ヴァンパイアバトルファンタジー

憧れの先輩に恋する普通の女子高校生『門宮茉莉』はある日、病弱な転校生『神宮寺静藍』と出会う。しかし怪事件をきっかけに、茉莉は静藍の中に眠る吸血鬼『ルフス』とも運命的な出逢いを果たしてしまい――茉莉自身や彼女の所属する部活メンバー達も、大いなる運命や戦いに巻き込まれていく……。

吸血鬼モノの作品は世に数多存在しますが、本作は『日光に弱い』だとか『ニンニクが苦手』といったベタな内容ではなく、魅力的かつオリジナリティ溢れる設定に満ちています。
設定だけでなく、茉莉の前に現れた物静かな美少年の静藍と交流し、かと思えば俺様系イケメンヴァンパイアのルフスも登場し、ボーイ・ミーツ・ガール……と言うより『ガール・ミーツ・ボーイ』モノになっている点も、個性が発揮されているなと感じました。
そして何よりも、過去編の完成度が非常に高いです。是非とも第三編までは読んで頂きたい。茉莉や静藍、そしてルフスを狙う、強力かつ冷酷な吸血鬼達が敵として襲いかかってきますが、彼らの過去や絆を知ってしまうと印象がガラリと変わり、敵勢力なのに応援したくなってしまうほどです。
『人間VS吸血鬼』という構図のまま、『主人公チームVS主人公チーム』の構成へと印象が移り変わっていくのは、お見事かつ素晴らしいと思いました。

ただ冒頭での茉莉の描写や口調が『ありがちなアニメキャラ』っぽかったり、クラスで挨拶する転校生と通学路で既に出会っていたり……という部分でベタすぎる感じがあり、テンプレな吸血鬼モノや学園ラブコメっぽいと初見では勘違いされてしまうかもしれません。
その可能性があるのは少し惜しいと思いますが、しかしこのレビューを読んだ方々には「そんなことはないぜ」と声を大にして伝えたいと思います。
情景描写やバトルシーン、主要キャラ達の揺れ動く心情なども巧みに表現されており、高い文章力も感じます。
続きやラストが非常に気になる良作でした。面白かったです!

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