あの日の記憶と牛達と

この作品は、平成30年9月6日03:07に発生した胆振東部地震をもとにした物語です。
 全体を通して、地震発生、そしてその後に起きた停電、さらにはそれにより酪農家が受けた被害について描かれています。
 文章は主人公の女性の一人称視点で、軽快に進んで行くので、読みやすいです。
 しかし、内容はけっしてライトではありません。
 地震によって、刻一刻と忍び寄る危機的事態が描写されます。
 個人的に一番驚いたのは、牛についてです。
 地震は日本に住んでいれば少なからず経験しますし、停電も対策は知っているかもしれません。
 けれど、停電が牛にどういった悪影響が及ぼすかなどはこの物語を読まなければ知ることはなかったでしょう。
 この作品はそういった災害の記憶を伝えてくれる素晴らしい物語です。
 さらに、小説としての表現技法もうまく、登場人物の喜怒哀楽がひしひしと伝わってきます。

 そんな災害の教訓にもなり、小説としても面白いこの作品をどうですか?

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