別海ブラックアウト(べっかいぶらっくあうと)

作者 中村 天人

120

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★★★ Excellent!!!

2018年9月6日に北海道胆振地方を襲った大地震。この地震で起こった大規模な停電は記憶している人も多いだろう。その停電の影響をある意味一番大きく受けてしまったのが、ある種意外なことに酪農家たちだった。

酪農と停電は一見そこまで重要な関係ではないように思えるが、実際は牛の給餌も搾乳も電気がなければ行えない。そして搾乳ができないという状況は牛の命にも大きく関わってくる。獣医師の篠崎は一頭でも多くの牛を救うべく大パニックに陥った農家を駆け巡る。

現実に起きた出来事を元にした本作品だが、注目すべきはその臨場感だろう。電気が来なければテレビもつかなければ携帯の充電もできず、冷凍庫の中のアイスは溶けてしまう。そうやって大きな事件だけではなく、停電による小さな困難をしっかり書くことで作品にリアリティが与えられ、そのまま別海を襲った大事件の緊迫感を描くことに成功している。

そしてこの絶望的な状況下で、懸命に自分のできることを行う篠崎たちの姿がグッとくる。電気が来なければ根本的な解決は望めない。それでも自分たちにも何かできることがあるはずだと奮闘する篠崎たち。大きなトラブルの裏側では、いつだって頑張っている人たちの姿がある。そんな当たり前だけど忘れがちなことを読者に思い出させてくれる一作だ。


(「ご当地小説特集」/文=柿崎 憲)

★★★ Excellent!!!

『たかが牛』
『どうせ牛なんて、食われて死ぬ運命にあんのに、そこまでしなくても』
『え?動物病院って牛なんかも診んの?』



人間達のミンナがミンナでないのは、充分に承知だけど、必ずこう思う人間も居るモオ。

天災での被害は文句は言えないけれど、あの時の篠崎先生達、動物病院のミンナの頑張りと、横山の叔父ちゃんのツライ大変だった想いは、ミンナから良く聞いてるモオ。


疫病や伝染病に罹った僕達は、助ける思案される事無く、速やかに無条件で毒殺されるモオ。
だけど、どんな悪い人間でも、同じ病気になった時は、全力で治そうと毒殺される事は無いモオ。

安楽死なんて、聞こえは良いけど、
『殺牛』
『殺豚』
『殺鶏』だモオ。

ペットショップでお金を払って、動物を買う。別にそれは商売として成り立っているから、文句は無いモオ。
だけど、ある日要らないと感じた人間は、簡単な気持ちで、動物を保健所に連れて行くモオ。
そしてその保健所には、明日には毒殺される動物達で溢れかえっているモオ。

お金で動物を容易く手に入れる前に、一度最寄りの保健所に行って、動物を保護する考えを人間には持って欲しいモオ。

そして一度授かったイノチは、最後まで一生懸命に面倒をみて欲しいモオ。
篠崎先生と横山の叔父ちゃんが良い例だモオ。


モ?
モオ?
僕か?モオ?

一番最終話の『復興』の回の、一番最後に僕は登場するモオ。


横山ファームのベイビーべこ『ヴァスケス』

★★★ Excellent!!!

平成30年9月6日の胆振東部地震。あの日札幌で私も経験した日々を、道東の酪農関係者の方々はこんな風に過ごしていたのかと興味深く読ませて頂きました。

酪農における電源インフラの重要性、通信網の断絶による物資補給の滞り、臨場感のあるトラブルの数々が起こるも、主人公の明るいキャラクターと軽快な筆致によりぐいぐい読み進めてしまいます。

牛たちの命と、大きな経済的損失、災害に遭ってもそれでも前を向いて生きていくしかない登場人物たちに(全然職種は違いますが)同じ道民として勝手ながらとても共感しました。

★★★ Excellent!!!

これは北海道でおきた震災の様子を農家という観点からのぞき見た、とても重要なお話です。
これを機にご自宅の防災意識を高めるのはいかがでしょうか?

事実を元にしてあるということで、リアリティもあり、出典による正しい情報も記載されていて大変勉強になりました。
また面白い表現や農家と獣医師の暮らしなど。ギャグにもスポットを当てるのも一興かと思いました。

★★★ Excellent!!!

この作品は、平成30年9月6日03:07に発生した胆振東部地震をもとにした物語です。
 全体を通して、地震発生、そしてその後に起きた停電、さらにはそれにより酪農家が受けた被害について描かれています。
 文章は主人公の女性の一人称視点で、軽快に進んで行くので、読みやすいです。
 しかし、内容はけっしてライトではありません。
 地震によって、刻一刻と忍び寄る危機的事態が描写されます。
 個人的に一番驚いたのは、牛についてです。
 地震は日本に住んでいれば少なからず経験しますし、停電も対策は知っているかもしれません。
 けれど、停電が牛にどういった悪影響が及ぼすかなどはこの物語を読まなければ知ることはなかったでしょう。
 この作品はそういった災害の記憶を伝えてくれる素晴らしい物語です。
 さらに、小説としての表現技法もうまく、登場人物の喜怒哀楽がひしひしと伝わってきます。

 そんな災害の教訓にもなり、小説としても面白いこの作品をどうですか?

★★★ Excellent!!!

2018年に北海道を直撃した大きな災害、『地震』の時の、とある女性獣医師の出来事を綴ったドキュメンタリー風に仕上がっているほぼノンフィクションに近い物語です。
この地震のニュースはもちろん報道などで知ってはいましたし、農場の牛の多くが搾乳作業が進まずに困っている、なども聞いてはいました。大量に廃棄されている牛乳も多くあると。
そのニュースを聞いて「大変だな……」とは思ってはいましたが、この物語に出会い、よりその事柄に詳しく触れることになるとはあの頃は思いもしませんでした。今、出会えたことに感謝をしたい、とても臨場感溢れる内容となっています。

この物語を読んで、ニュースでは決して知ることが出来ないことや、獣医師や農場の人々の苦悩、ライフラインの有難さ、ひしひしとリアルに感じられます。最後のお話は涙なしでは読めませんでした。

全体的にシリアスな内容の中、主人公の篠崎先生の底抜けの明るさにすごく元気を逆にもらえるという、とても強くて、楽しい女性が語り口なので、読んでいてすごく面白いのです!
そこはやはり作者さまのお力だな~と思い、尊敬します。
ちょこちょこ出てくる田中さんという男性もいるのですが、彼もまたさらっとしててすごくいいとこを取ってくるんです(笑)ぜひ彼にも注目していただきたいです。

様々な命が奪われ、涙が多く流れた史実からの物語。
ですが、この苦しい苦境の中でも、また日は昇る、というテーマ性の強い物語。読んでいてすごく勇気がもらえました。
短編で、短い時間でも読めますので、ぜひ皆様に触れていただきたいなと思います。

★★★ Excellent!!!

3年前、北海道で大停電があったことを覚えておいででしょうか。
あの時、何が起きていたのか。牧場を回る獣医師さんの視点で綴られた物語です。

電気が来ないため搾乳機が動かず、体調を崩していく乳牛たち。
農家さんの不安、獣医師さんの奮闘。それが決して重くなりすぎない、コミカルかつリアリティある絶妙な筆加減で描かれています。

北海道の牧場と聞くと「大自然」みたいなイメージですが、それでも電気は必要不可欠。
ごく当たり前にある生活も、実はたくさんの人々の地道な働きの上に成り立っているのだと実感しました。

絶望に膝を折りそうな時、何が人の心を支えるのか。
これまで頑張ってきたこと、繋いできた絆、共に踏ん張る仲間の存在。
それらは、真っ暗闇の中で人々を奮い立たせる灯火だったと思います。

主人公・篠崎先生の明るいキャラクターも楽しくて面白いです。
笑えて、胸が詰まって、熱くなって、大事なことが沁み入ってくる。いろいろなことを考えさせられる、非常に読み応えのあるお話でした!

★★★ Excellent!!!

皆さまは覚えておられるでしょうか?
2018年3月に北海道で大きな地震と大停電があったことを。

後に胆振東部地震と名付けられたそれの最中、駆け回った一人の女性がいた。
彼女は獣医師。牛などを専門とするお医者さんだった。

地震と停電が起こった時。それは人間だけでなく、乳牛たちにとっても死活問題だったのだ。
どういうことなのか? それは本作を読んで頂きたい。

少なくとも畜産に疎いわたしは、この事実を知りませんでした。人間のみならず、牛たちも苦しく辛い思いをしていたのです。

減災。その為にわたしたち一人一人が出来ること、きっとたくさんあるのではないでしょうか?

そしてこの物語、作者さまの他作のキャラがゲスト出演しておりますよ(*^^*)
彼も良い役貰いましたね。