不幸を背負って、親父は笑顔で逝った

作者 春日あざみ@電子書籍発売中

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★★★ Excellent!!!

人の不器用な愛の形が心に染みる優しい物語。たくさんの人生が絡み合い、完結まで読者をぐいぐい導いていきます。
素朴な町の描写に不思議と懐かしい気持ちになりました。心情に訴える情景描写も素晴らしいです。
厚みのある人間ドラマを読みたい方にオススメです!

★★★ Excellent!!!

幸せと不幸のバランスは保たれている。
そんな考え方があります。
何かを得る為に何かを失う。
本質的に世の中は等価交換なのだと思います。

本作でも、それをテーマにしています。
誰かの幸せを願い、報いを受ける。
それを不思議な力として表現していますが、ひょっとしたら我々もそのシステムの上で生活しているのかもしれません。

ただ、幸せとはなんだろう。
我々に訪れるものは事象でしかありません。
それを、どう捉えるかによって事象の価値が変わるのだと思います。

あなたにとって、幸せを願う誰かがいて、そこにかける祈りは苦痛ですか?
費やす労力は「不幸」ですか?

無償の愛なんて存在しない。
だって、誰かを想う時、きっと自分も報われているはずだから。

★★★ Excellent!!!

読みやすい文体で淡々と紡がれる話には過不足なくしっかりとした描写が入る。目に映る光景、行動、そして心情。そこには様々な人間ドラマがあり後悔と葛藤がある。その(読者の何だろう?どう思っているのだろう?)をキチンと描き、没入感を提示してくれている。ここまで読者を思って丁寧に作られている作品は少ないと思う。

人の死を扱う描写があるが苦しくなく、どこか開放的にも感じる。死にゆく当人の苦労や苦悩を知っていてもなお、心から「お疲れ様、どうか安らかに」と思えてしまうのは、作者の登場人物に対する思い入れがしっかりと頭に定着しているからではないだろうか。それは登場人物のセリフ一語一語をとっても言える。この人の、このセリフ。ピッタリとあった癖のあるしゃべり口は説明以上に体を表している。

どこまでも現実を追求した現代ファンタジー小説。寒々とした今宵には特におススメです。心の温かな朝を迎えるため、どうぞお手に取って読んでみてください。

★★★ Excellent!!!

(『第一章 親父の背中:鈴木祐也』まで読んでのレビューです)

私は滅多に泣かないんですが……感動して泣きました。

多くの人の心に訴える名作だと思います。
アイディアがおもしろい作品ではあるのですが、アイディア負けせず、人物描写がとにかく素晴らしい。
さえない親父の描写がほんとにさえなくて、その人間臭さが絶妙です。

各話の区切りや話の展開もスピーディーで、でも必要な描写は過不足なく、淡々としているのに深いところまで描かれています。
ここが作者様の非凡なところだと思います。人間観察力。

そして作品を支えるのは、何気ない部分のリアリティ溢れる描写だと思います。
多角的な視点を用いているところもいい。

ありきたりの感動ものかと思いきや、物語は最初から最後まで、見事な展開と素晴らしい人物描写でつながっていきます。
本当に素晴らしいと思いました。

おすすめです!!



★★ Very Good!!

泣きました。
結構序盤から涙腺がやばかったのですが、27〜30話が特にぶっ刺さってボロ泣きしました。

ネット小説としてこの作品も良いと思うのですが、是非この作品を劇場で見てみたくなりました。劇場という邪魔が一切入らずに物語にどっぷりと集中できる場所で私はこの物語で泣きたくなりました。
ギミック的に役者さんや美術さんの技を堪能できそうですしね。

良くも悪くも現実味のある年齢高めの登場人物達や人との付き合いの難しさ等重いところもありつつも、「当然になって見落としがちの優しさ」に気付かされる寓話的なストーリーとファンタジックな設定と軽めの文体で読みやすかったです。
まさに、タグにあるような「万人向け」の作品ですね。

ですが、私はあえてこの作品の重い要素を尖らせた内容かつ重めな文体で「大人向け」に特化した話を読んでみたくなってしまいました。
作者さんはそのような話はもう書かれているのでしょうか? 落ち着いた頃に探してみようと思いました。

★★★ Excellent!!!

読み始めた時から、「絶対感動する作品だ」と直感しました。そしてその勘は当たりました笑
第一章から胸が温かくなったのですが、その先が意外な展開です。
視点が変わると更に知らなかった世界が見えていき、どんどんこの作品の本当の姿が見え始めます。

切なくなるシーンもありますが、読み終えた時の余韻はいつまでも続く感動作です。
もし自分がこの立場だったら…などとついつい感情移入するほど魅力的なキャラクターたちを、きっとみなさんも愛するようになると思います。
もっと多くの人に知ってほしい、そんな一作でした。

★★★ Excellent!!!

身近な人の死に触れると、人は後悔を抱える。
生前に伝えられなかった想い、掛けられなかった言葉、心無い言葉や態度に対する申し訳無さ。

物語の序盤は、主人公の回顧から始まる。この作品には、数奇な運命に翻弄されながらも、温かく生き抜いた家族の愛情が詰まっている。

涙なしには読めない、そんな美しくも温かい作品です。ぜひ、ご覧ください。

★★★ Excellent!!!

幸せを与える。そこから思い浮かんだのは童話の『幸福な王子』と映画の『ペイフォワード』でした。どちらとも違いますが、これらが好きなら間違いなく刺さります。保証します。

さて、このお話は愛嬌が取り柄の秀明と『幸せを切り売りする日記帳』を中心にして様々な人の運命が絡み合っています。
秀明の死からはじまり、彼の秘密に触れた秀明の子の心境の変化が丁寧に描かれています。
まるで自分が体験しているのかのように思えるほどのリアリティは必見。
物語はそれだけにとどまらず、秀明の妻、秀明に寄り添っていた白い猫、日記帳を与えた存在にまで派生し、彼らの後悔も浮き彫りになる。苦しみを越えたところに何があるのかは、どうぞ自分の目で確かめてください。

Good!

幸せを切り売りしていくドラマです。
そんな力を持っているのに一切、切り売りしなかった人とそれに連なる人のものがたりです。
とても感動してしまいます。
誰か……というか私も猫を亡くしました。気持ちは分かります。祖父母は幼いときだったので記憶は曖昧ですが……。
人が亡くなる話が、これだけ感動を呼ぶというのも出会いがあるからです。
善い行いに報いるように良い行いが帰って来ると良いのですが……。

★★★ Excellent!!!

 第1章は、主人公の祐也の父が亡くなったところからスタートします。明かされていく亡き父の死の理由、それは、父が若い頃にした「ある選択」と大きく関係していました。真相の全てを知った祐也はーー。

 第1章の主人公「祐也」、第2章のヒロイン「みさき」。深い関係は無いように思われた彼らの人生の線が、ある地点で交錯し、未来へ繋がっていきます。

 それぞれの章を最後まで読み切れば、感動すること間違いなしです。

 また、第3章では、本編の内容が別視点から掘り下げられており、大変読み応えがあります。

 家族愛の物語を求めている方、是非お読みください。

★★★ Excellent!!!

もし、あなたが「自分の幸せを切り売りする力」を得たとしたら、どうしますか?
その「力」を、どう使いますか?
これは、そんな「力」を持った男性と、その家族の物語です。

ある一人の父親が亡くなったところから、この物語は始まります。
父親がしまいこんでいた物を、彼の妻と息子が開封することから、父親がもっていたある秘密が、回想とともに明らかになっていきます。
「力」を持っていた父親は、決して特別な人ではありませんでした。
むしろ、何処にでもいそうなおじさん。
しかし、彼がどんなに愛にあふれた人間であったかを、死後、妻と息子は知ることになります。

この父親がどんな風に「力」を使ったのか、その結果がどうなったのか、どうぞ、御自身でお読みになって確めてみてください。
そして、温かな感動に包まれてください。

★★★ Excellent!!!

最初に言っておきますが、これ本当にツラいです。
おそらく、大切な親族が亡くなった人ととか、読めないと思います。ツラすぎて。
斯く言う僕も、途中で投げ出したくなりました(笑)、それも何度も。
相当に耐性が必要です、ツラい話に対しての。

だけど、読ませるんですよ。
先が気になってドンドン読んでしまうんですね、大したもんだと思います、この筆力は。

あまり書くとネタバレになってしまうので書けないんですが、
後半部は本当にいい話です。
前半部を耐え抜けた人にとっては、ご褒美と言ってもいいくらいの。

マジで読む人を選ぶ作品だとは思うんですが、
ヒューマンドラマ中編としては、かなりのクオリティですよ。
泣けます。マジで。

★★★ Excellent!!!

この作品は面白いを超えています。素晴らしいの領域です! こんなに真直ぐ愛を描こうとして、成功している作品は珍しいと思います。
小細工無しの全力パンチは、読者の胸にガンガン突き刺さって来るでしょう。出会えて良かった! と、思える作品です。

★★★ Excellent!!!

ネタばれになってしまうので詳しくは述べませんが、良い行いをした人には幸せになってほしい。でも、なかなかそうは行かない人生も多い。
魂の輪廻という概念が本当にあるのなら、何度も生を繰り返していつか幸せになれたら、それまでの生での苦労は報われるのかもしれない。
文章が分かりやすくて、すんなり心に届いてほっこりした気持ちになりました。

★★★ Excellent!!!

主人公である「親父」さんは、ひょんなことから自分の「幸せ」を自分の采配で「他人に切り売り」できる能力を持つことになります。
文字どおり、「切り売り」なので「対価」を得て売買契約は成り立つわけです。

ですが、親父さんはその「対価」を受け取りません。
ただ、ひたすら「譲渡」するばかり。
底抜けにお人好しで、余りにも無欲で、
どうにかなると楽天的なのに、自分自身の「価値」には全く無頓着。

結果、親父さんはご家族にも周囲にも誤解されたまま、
病魔に侵され孤独にこの世を去ってしまいます。
残されたご家族は、親父さんの死後、日記と芳名帳で親父さんの人生を追体験することになり、そして深く後悔することになってしまいます。

この作品の根底には、家族も他人も区別なく「優しさ」と「後悔」のアンバランスさが付き纏います。
誰もが自分の人生を生きることに精一杯で、誰が悪いわけでもない。
ほんの少し、意思の疎通と言葉が足りなかっただけなのに、
「親孝行したい時に親はなし」という悲しい現実に見舞われてしまいます。

この物語では、苦しい後悔が次のチャンスへと繋がっていきます。
前半は親父さんと息子さんを軸に回顧録として展開し、
後半は奥さんと親父さんの後日談として、時代を飛び越えて急展開していきます。

人情味あふれるノスタルジックなヒューマンドラマと、
カクヨムらしい異能と転生要素が盛り込まれた、心温まる優しいお話です。
ぜひ読んでほしい。

★★★ Excellent!!!

家族でもペットでも、かけがえのないものを亡くした時、人は必ず後悔します。四十九日が終わるまでは毎日忙しなくて忘れていますが、半年後か二年後、あるいは十年後、人は必ず「もっとこうしてあげればよかった」「あんなこと言わなければよかった」と後悔するものだと思います。

「幸せを切り売りする」という発想の面白さから読み始めた作品でしたが、その力は誰もが羨むような理想的な幸せをもたらしませんでした。
不幸せは近しい人を巻き込んで連鎖していく。それでも「親父」は人の幸せを願い、不幸のるつぼに落ちていく。この辺りの複雑さは非常にリアリティがあり、繊細に描かれていて面白かったです。

本編のオチも好きでしたが、主人公が変わって続編エピソードの連載が始まりました。主人公の思いがどのように変わっていくのか、最後まで見届けたいと思います。


※以下シリーズ完結のため追記


めっちゃ普通におもしろくてヤバいしなんなら何度か「親父」のオンナになるわこんなん。章ごとの主人公と登場キャラクターのチョイスが面白いですが、最終的には箱推しです。ありがとうございました。