感動、届けます。読者まで(クソダサレビュータイトルやめてほしいっす!)

タイトルに含まれる黄昏という名前から、どこか郷愁漂うハートフルなヒューマンドラマ……と想像した人は、半分当たっています。でもそんな生易しいものではない。断じて。

主人公——千曲川(ちくまがわ)が所属する『黄昏運送』という運送会社はただの運送会社ではない。死んでしまった人へと物を届けます。物だけではなく、送り主の思いまで。
死んでしまった人、というと幽霊のようなものを思い浮かべますが、実際は少し違います。その辺りは作中で詳しく説明されていますので、ここでは語りません。

この作品の見所は
【文章】、【ドラマ】、【構成】
です!
ざっくりとし過ぎじゃねえかぁああ!
それに当たり前のことじゃねえかああああ!

と思うかもしれませんが、良作、名作と言われるものは、この三点をしっかりと押さえており、ゆえに銘打たれるわけです。
ですがこのままだとあまりに適当過ぎるので、少し掘り下げましょう。

【文章】に関してですが、こちらは本当に『読ませる』文章です。ストレスゼロ。この字ってなんだったっけ? と辞書を引く必要もない。しかしそれでいて、安っぽくない。しっかりと練られた文章で、スッと頭に入り腹に落ちてきます。
なによりコメディタッチで一行一行が面白い! 従来のプロローグは説明も多く読者を退屈にさせがちですが、その説明(会社の説明でした)ですら面白い。どうなってんだこれほんとに。そう思っちゃうほどに。

【ドラマ】に関して。こちらは、コメディとシリアスの落差が凄いんです。しかし、それほど落差があるにもかかわらず、心は置いていかれない。ずっと作品とともにあるように感じます。
コメディパートではゲラゲラと笑わせてくれて、シリアスパートでは胸を熱くさせてくれる。涙をこらえながら読まねばならないでしょう。

【構成】に関して。序盤で張られた伏線が、次々に回収されていくのは、読んでいて気持ち良かったです。
また、通常の作品……これは小説に限らないのですが、ほとんどの物語が『主人公の経糸に緯糸が入ってくる』という構成です。しかしこの作品は、キャラがそれぞれ経糸を持っており、主人公の経糸に複雑に絡んで撚り合い一本の太い紐になるかのようなのです。
私は読み終わってからそれに気付いたので、読んでいる最中は完結を心配していました。残り5話くらいで「これほんとに完結するのか?」と心配になったくらいです。大丈夫。しっかりがっちり最高のエンディングが用意されていました。そしてすべてのキャラたちの物語がちゃんと結ばれておりました。

単純に読み手としても、書き手としても「読んでよかった!」と思える作品でした。
いろいろ小難しいことを言いましたが、めっちゃ感動するんでマジで読んでください!

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