本当にいるよね。蚊みたいな女って。

他人に寄生する女。ずる賢く人の庇護欲や善意を引き出して、相手を乗っ取っていく女。周りの人間を騙すことでターゲットを孤立させ、自分から逃げられなくしていく女。

作者はそんな登場人物を『蚊・モスキート』になぞらえた。
血を吸うのは蚊のメスだけだ。蚊のメスは一生に数回子供を産む。主人公は何人目だったのだろう。

この話は長編の上巻だ。
今後、事件の真相が解き明かされ、登場人物の今後が示されるのだろう。
構成が巧みで、一気に読み進められる。とにかく巧い。
そして、多くの謎が残されたまま話は終わっている。
ホラーであり、ミステリー、現代ドラマでもあるこの小説は、今も影から獲物を狙っている『蚊』のように、まとわりつかれるまで気づけない魔性の女の話だ。

こんな女いるよね。私はそう思った。事実、こんな女に振り回されたことがある。
上手に上手にそれは近づいてくるのだ。蚊のように血を吸っていることを気づかれないようにして。気づいた時にはたっぷりと血を吸われ、ずっと嫌な痒みが残り、掻きむしった傷が残る。
叩き潰したい。自分から吸い取られた血で手が汚れたとしても。
主人公がそう思った気持ちは分からないでもない。

上質な心理劇。謎に満ちた血の池にようこそ。
完結編が楽しみだ。

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