霊感こそ、一番身近な異能力だったのかもしれない。
- ★★★ Excellent!!!
主人公の男性は、ホラー小説を書くのが趣味だ。そんな主人公に毎回恐怖ネタを提供してくれていたのが、職業訓練校で出会ったコオロギという友人だった。
毎回語られるコオロギの不思議な体験を聞いて、主人公は今日もメモを取る。どうやら本物の妖とは、匂いであったり、触覚であったり、五感に訴えるものが多いらしい。つまり、「○○の妖怪」だとか、グロテスクな死体とか、祟りだとか、呪いだとかではなく、とても日常的であると言うことだった。
そんな人とは一線を画す日常にいるコオロギに、主人公は惹かれていた。
そして、ホラー小説を書いている自分を見直して、ふと、思った。日常を妖に脅かされているコオロギは、本当は妖のことなんて、思い出したくもないのではないか? 自分はコオロギに酷いことをしているのではないか?
主人公はコオロギにそのことをきいてみると、意外な答えが返ってきた。
コオロギがいつも自分だけが感じていた妖について語る時。
それを主人公と共有できた時。
果たして二人の関係に変化は訪れるのか――?
ホラー小説ほど恐怖感はありませんが、これが本当の怪異と呼べるのではないかという、不思議でちょっと不気味な感覚が残ります。
読みやすい文章で、ネオンのもとを歩く二人の雰囲気が好きでした。
是非、御一読下さい。