第14話


「まさか幽霊の仕業って話をしてます?」

警察が冗談っぽく言った。


「可能性はあるって話です。呪詛などを使って誰かを呪い殺す方法は未だに存在すると言いますから」


「あはは、今は指紋とかありますし、最近ではDNAで犯人がわかる時代ですからね。まあ結果がわかるのに少々時間はかかりますが、私たち警察は必ず生きた人間を捕まえますよ」


「まあそうですよね……。必ず犯人を捕まえてください。天倉さんがここに来たのも何かの縁ですから」

父親は言った。


「必ず捕まえます。でも万が一犯人が人間でなかった時は、頼りにするかもしれませんね」

そう言い残して警察は去っていった。



それから何日もいつもの日常を送っていたある日、一人の若そうな女性が寺を訪れてきた。



「あの私、天倉 弓と申します。先日亡くなった天倉 誠司の妻でございます」


「天倉さんの奥さんですか?一体どうしたんですか?」


「誠司さんの遺品にここでもらったお札があると警察にお聞きしましたので……」


「はい、私が天倉さんにお札をお渡しいたしました。天倉さんの話を聞いて、寺に昔から伝わる厄払いのお札です」


「…………」

弓は下を向いたまま黙っている。


「天倉さんは酷く怯えていました。人間ではない何かに……。少しは助けになればと思ったのです」


父は優しい声で弓さんに言った。


「警察の方が捜査を打ち切りました……」


「そんな……いくらなんでも早すぎる。それはおかしいですよ。指紋や今はDNA鑑定があるのに」


「指紋もDNA鑑定もしたのですが、何もでなかったそうです。それで身内の犯行だと疑った警察は家族全員に事情聴取をしたのですが、手応えがなかったのでしょう……結局自殺と断定して終わりました」


「そんなこと……でも身元がわからないぐらいだったのですよね?」


「はい。自殺では不可能ですよ。誠司さんは……バラバラだったんですよ」

弓さんはその場に泣き崩れてしまった。


父は黙ったまま、そんな弓さんの背中を優しく摩っていた。


そして弓さんが落ち着いた頃、父が言った。


「私を屋敷に連れてってもらえませんか?」

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