第15話

その時母は、子供ながらに嫌な予感を感じたらしく父を必死に止めたらしい。


「大丈夫だよ」


そう父は言って弓さんと屋敷に行った。


母はずっと父の帰りを待っていたらしいが、その日は帰って来なくて翌朝に帰ってきた。


「おかえり、屋敷はどうだったの?」


母は安堵し笑顔で言った。


「子供は知らなくていいよ。それより少し疲れた……少し寝る事にする」


父はそう言って寝室に入っていった。


母は不満だったが、夜になると教えてくれるだろうと思ったので待つ事にした。



___________



「でもね、結局聞けずになってしまったわ」


電話越しの母の声が小さくなった。


「どうして?」


私は聞いた。


「その日に父は脳梗塞で亡くなったの。家族全員が朝帰りで疲れてると思って、起きるまでそっとしといたせいで父の異変に気づかず発見が遅れてしまったの」


「そんな……」


私はそんな偶然はありえるのかと疑った。


「医者に言われたのは、検査結果があまり良くなかったので前から前兆があったのでは?だって」


「あったの?」


「あったのよ」


あったんかい!と心の中でツッこんでしまった。


「今思えば、父はよく手足が痺れるとか言ってた」


「なるほどね……てっきり呪いかと思ったわ」


私は心底安心した。


「そんなのある訳ないじゃない」


母はきっぱり断言する。


「お母さんはそう言うと思ったわ」


「でもね真奈美」


「何?」


「私の嫌な予感って当たるの」


「おじいちゃんの件?とか」


「そうね、それもあるから真奈美……気をつけてね。私心配で……」


「大丈夫、屋敷の件は考え直すわ」


「そうよ、やめなさいね」


やめるとは言ってないと心の中でツッコんだ。

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