第8話


「僕は……しないもん……」


「…………」


私は普通の一般人だ。ただちょっと人と違うのは、幽霊の気配を感じて除霊できるだけ。


母親でなければ先生じゃない私には、子供を説得できる術をしらない。


「じゃ浄霊してあげる」


こうなったら強行手段しかない。


「なんで?ほっといてよ……おとなしく待ってるから」


「だめ。最後に言い残す言葉ある?」


「やめてよ!ほっといてよ!」


ジンタくんは怒鳴った。


私はゆっくりと印を結ぶ。


「カケマクモカシコキカシコキスワカイ……」


「おねえさん待って!僕……お母さんに会いたいよ」


ジンタくんが必死に叫ぶのを聞いて、私は言葉を止めた。


「なら家に行きましょう」


そう言ってジンタくんに道を示した。


まあ、道って言っても公園の入り口なんだけど、幽霊になると出入り口がわからなくなる事が多い。



だから幽霊は、同じ場所に留まり彷徨い続ける。



稀に、偶然迷い込んだように外に出る事があるが、行き着く先は悪霊がいる負の場所?邪のエネルギーのたまり場のような所だ。


もし、ジンタくんがそんな所に行き着いたのなら、悪霊に喰われるだけだろう。


悪霊に喰われた幽霊は、転生も出来ず地獄よりも苦しい思いをすると、昔父親に聞いた事がある。


「……うん」


ジンタくんは小さい声で返事をした。


「大丈夫。私についてきて」


そう言って私は公園の外にでた。

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