三千文字の《人間》賛歌

真冬。交差点で宗教勧誘のビラ配りをする女性がふたり。
差しだされたビラを拒否した男は、けれども寒そうに震えるふたりが気に掛かり、引きかえす。缶コーヒーをふたつもって。
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寒い季節の場景がありありと浮かぶ、やわらかだが、現実感のある筆致。むだのない、それでいて真心の伝わる台詞まわし。なによりもこの短い小説のなかで《人間》を確りと掘りさげて書きこんでおられるということに、わたしは感嘆の声をあげずにはいられませんでした。
筆者様の小説はいくつか拝読しておりますが、いつも《人間》の書きかたが素晴らしく巧みなのです。それは著者様が絶えず、他人と誠実にむきあい、接している証ともいえるでしょう。
人間其々に考えかたがある。受け取りかたも違えば、信じるものも違う。けれど自身の考えを貫くことは、決して誰かの考えを否定することではないのだと。
敢えて、人間賛歌という言葉を贈りたいです。著者様の《人間》にたいする深い愛に敬意を表して。

ぜひともひとりでも多くの読者様に読んでいただきたいです。