概要
少し手を振って、いいじゃない
深夜の駅舎から出た俺の前に、ビラを差し出す女性たちがいた。
少し近くてかなり遠い。交わることのない道で、俺たちは手を振り合った。
少し近くてかなり遠い。交わることのない道で、俺たちは手を振り合った。
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- ★★★ Excellent!!!三千文字の《人間》賛歌
真冬。交差点で宗教勧誘のビラ配りをする女性がふたり。
差しだされたビラを拒否した男は、けれども寒そうに震えるふたりが気に掛かり、引きかえす。缶コーヒーをふたつもって。
…………
……
寒い季節の場景がありありと浮かぶ、やわらかだが、現実感のある筆致。むだのない、それでいて真心の伝わる台詞まわし。なによりもこの短い小説のなかで《人間》を確りと掘りさげて書きこんでおられるということに、わたしは感嘆の声をあげずにはいられませんでした。
筆者様の小説はいくつか拝読しておりますが、いつも《人間》の書きかたが素晴らしく巧みなのです。それは著者様が絶えず、他人と誠実にむきあい、接している証ともいえるでしょ…続きを読む