【これぞ文"芸"】呪と笑と萌。こんなにも綺麗に重なるものなのか。
- ★★★ Excellent!!!
【構成と文章力にここまで驚かされたのは、カクヨム来てから初めてです】
第二部二章途中までのレビューです。そして「ちょっとこれ、要点まとめてレビュー書くの無理じゃない?」と思わせる、一筋縄ではいかないお話ですので、レビューがちょっと長めになることをご容赦ください。(でも読んで!)
【濃厚な『呪』の第一部】
舞台は平安。美しき姫の物語。ここで驚かされるのは文章の秀麗さです。古文のようでそうではなく、雰囲気だけが絶妙に伝わってきます。読んでいるだけで平安時代の情景が目の前に広がるよう。
そしてこの文章だからこそ、姫の美しさが際立つ。情の強さが浮かび上がる。呪や怨が生々しく感じられる。
しかしここで驚いていてはいけません。
【ライトな『笑』の第二部第一章】
舞台は現代。非モテ女がモテ悪女と対決(?)するところから始まる、苦悩と笑いのお話です。
一部とは打って変わって、会話文中心のライトで読みやすい文章です。逆に言えば、非モテ女の恋愛ものとしてありふれたものにも思えてしま……わない。ここが凄いところです。『一部』が効いてくるんですよね。
ピアノで言うと低音部でガチャーンと鳴らしたあとに、その余韻に乗せて、高音部で綺麗なメロディを奏でるみたいな感じ。第二部では余計な説明をしなくても、第一部の伏線があるので、ちゃんと深い物語になるんです。
この構成はなるほどと思いましたし、そして誰でも真似できることではないなと思いました。何故なら第一部をあのクオリティで書けないから!
【迷走する『萌』の第二部第二章】
多くを語るとネタバレになるので黙っておきますが、「強者の見せる意外な一面」等のセオリー通りかつ回避不能の一撃で、読者はガードブレイク必至です。心理的には完全に巻き込まれます。あのやり方はずるい。
【最後に】
第一部があるおかげで、「恋愛成就」「失恋」等の結末だけではなく、物語全体としての帰結がとても気になるところです。
というわけで、このレビューで興味を持った方、どうか第一部に面食らって退却したりせず作品を読み進めていただきたいです。
一読の価値アリ。