【完結】陰陽師の呪縛 〜男を必ず落とす超モテ女の秘密〜

雨 杜和(あめ とわ)

序章



 ここに、一幅いっぷく大和絵やまとえがある。


 牡蠣かきの殻を砕いた胡粉ごふんが使われた作品で、十代後半くらいの魅力的な少女が描かれていた。使われた絵の具から、おそらく、平安中期のものだろう。


 その隣には鎌倉室町時代のものか、白拍子しらびょうしの衣装をつけた、よく似た顔つきの少女の絵姿。さらに時代を追って、同じ人物としか思えない肖像画が数枚つづく。大正時代、それは絵ではなく色褪いろあせたモノクロ写真になった。


 背景は時代を追うが、執拗に同じ人物が描かれた肖像画。描いている作者も同じに思える。


 時が川の流れとすれば──

 この絵だけが宙に浮かび、ただ、さびしく孤独に留まっているようだ。


 この奇妙で、ありえない一連の画について。



 さて、いったいどこから話をはじめたら良いものだろうか……。



 わたしは下鴨モチ。

 現代に生まれ、モテない自分を変えたいという馬鹿げた理由から、深い孤独に生きる不死のあやかしと出会うことになる。


 この不思議な絵姿の女が人生に関わり、わたしは成長し、恋を失い愛を得たのだ。



 だから物語のはじまりは、あやかしが誕生した平安時代からはじめようと思う。

 では、ある事件から、わたしの手に入った『深草の女房の日記』を、まずは紐解いてみようか。



(つづく)

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