未完の青春
カズマ
春
矢島健の憂鬱1
最近、星川駅の周りに高層マンションが何棟もたち、大型店舗ショッピン
グセンターなどの商業施設も充実してきた。しかし、駅から15分くらい
離れて行くと駅とは打って変わて田畑が点々と広がっり、お店も
コンビニや少し寂れた飯屋や喫茶店など個人店が多くなる。
視界に入る田んぼやお店など特に気もせず通学路を自転車をこぎ
ながら、目的地である県立神羅学園を目指した。
県立神羅学園は全校生380人、偏差値60とこの地域では高く、
確か、サッカー部、バスケット部で県大会常連、吹奏楽も
そこそこいい成績らしい。入学案内でそんなこと言われた気が
するが、中学で帰宅部の俺はあまり興味がなかったし、家から
自転車で15分くらいで通えるからここにしただけだしな。
「連絡事項は以上だ。何か連絡事項あるやついるか」
担任の前田先生は周りを見渡して、
「特になさそうだな。これでホームルームは終わりとする」
ホームルームが終わり、俺は席を立つ。片手でドアを開き、廊下を出てた。
廊下を歩いている最中、女子生徒とぶつかってしまった。
「これ落としましたよ」
女子生徒に落とした教科書を渡す。まずは目を合わせて笑顔を返す
のが基本だ。にこー。俺は口角を上げ、笑顔を作った。
「ひぃごめんなさい。失礼しました」
俺の笑顔は彼女に目が笑っていない怖い男に見えただろう。
女子生徒は悲鳴をあげて一目散に走っていた。やれやれ嫌われたものぜ。
「相変わらずの嫌わっぷりね、矢島くん」
俺の状況を端的に表現したやつのいる方に振り向いた。
「今日もなんだか不景気そうな顔つきをしているわね。特に目つきなんて
ゾンビ映画にでも出れそうね」
目の前にいる女はいかにも言いぐさで俺の容姿をことごとくして悪く
言ってきた。
「うるせえ、目つきは生まれつきだ。でもお前は何してるわけ」
胸に赤のリボン、スカートはチェックでブレザーを着ているふてぶてしく
俺の目前に立つ女子生徒がそこにはいた。こいつの名前は桜井美
雪のように白く、髪はしなやかで肩までの長さがある。
目元は二重で清楚で凛として風格はどこかのお嬢様のようだ。
身長は156cm。校内には密かにファンがあるくらい人気のあるやつだ。
俺からしたら眼光が鋭くて、口うるさいこの女にしか見えないのが。
皆には俺からいい眼科を紹介したいくらいだ。
今も、俺達にいくつかの目線が注がれ、小声で何か聞こえてくる。
「となりにいる人、誰かしら」
「知らない」
おいおい、そこの女子生徒A、俺は同じクラスだぞ。
「さっき逃げっていた彼女と同じ教室 で科学の授業よ」
彼女はさっきの女子生徒が去っていた方へ指をさしながらそういった。
科学室はクラスの教室とは別の棟にある。他にも部活の教室や放送室や
図書室も別の棟だ。
「そうか、1-Aは次の時間科学。炎色反応の実験とか。俺はこれから
数学の授業だ。やだなー、不等式とか確率とか苦手なんだが」
「ええ、その実験よ。文系でも高校二年生までの数学は入試で出るのだから、
少しは頑張りなさい。ここの段階で躓くと後が大変よ”10点”くん」
彼女はとても艶やかで素敵な笑顔でそういった。
こいつは人をおちょくる時や貶す時によくこういう顔をするのだ。
言ってることが正論だから、言い返せないし、むかつく、こいつ。
「てか10点くん、名前じゃない。さっき矢島くんっていった
だろうが」
「そうだったかしら、覚えてないわ」
ちょっと頭良いくらい(学年3位)でマント取りやがって。
こいつ、桜井は俺に対しては言葉が強めましましなのだ。
ほぼ初対面の時は数分見惚れるいただけで
「なに、あなた下卑な目で私を見てのる」とこいつは言ってのけだ。
そのとき、こいつは敵だと思ったね、俺は。
「ふん何、数学が無くても生きていけるしね」
などとテンプレートのいいわけをいってみた。実際数学っていつ
使うわけ。なんか問題解決の能力の向上とかうたっているが、
そんなものゲームやっていても身につくわ。
休日はたまにゲーセンで麻雀をして頭を使っているから平気だ
決して女の服がはだけるのが見たいから麻雀しているわけではない。
決して。男子高校生がみんな女に夢中と言うわけではない。
世界が平和になればいい的なことも考えるわけですよ。
ええ、そうですとも。
「はぁー。それでもあの点数はないわよ。ここは進学校なのよ。
少しは気にしなさい」
桜井は深刻そうに頭を抱えていた。確かにひどい点数だが、
他の科目はそんなに悪い点数ではない。とくに、文系科目は上位
20には入っている。二ヶ月に一度学内模試があり、
俺はケツから数えて数学2位を取ってしまった。
なぜこいつが俺の成績を知っているかはいずれ話す。
「お前は俺のかーちゃんかよ」
かーちゃんってなんでああもうるさいのかね。とくにゲーム
しているときとかさ。これからやるときに限って勉強しなさい
といってきやがる。それで勉強しなきゃと思って勉強する
やつとかいないだろう、実際。
彼女は右腕に付けてる腕時計を見ていた。俺のネタは無視
ですかそうですか。俺は話題を変えることにした。
「昨日貸した読んだか?」
俺とこいつの数少ない共通点がある。それは読書家であることだ。
俺は小学生の頃から一人でいる時間が一般的な生徒に比べて
長かったので、自然と本を読む習慣が出来ていた。そのおかげで
文系科目の点数は悪くないのだ。
「あぁ、あの本ね。読んでないわ」
俺は桜井に最近流行りの推理小説をオススメした。内容はSFチックだが、
事件を解くまでの工程が見事な作品だった。こいつは名作や古典
系をよく読らしいが、最近の面白い流行りには疎いらしいので、
俺が本を貸してやったら、珍しく素直に受け取った。
「はぁ、なんでだよ」
俺的にはそこそこ、イチオシの本だったのが。
まぁ、趣味嗜好は千差万別、お気に召さないのも無理はないが。
「だってこれよ」
そういって俺にブックカバーを外して本を返した。
「なん、だっと、、」
俺は過去の自分がやっていた浅ましいことを後悔した。
「そろそろ時間だから行くわね、それじゃ」
「勝手に終わらすなー」
返ってきた本をみてると、端的に言うとやましい系の本だった。
しまった、まとものやつのブックカバーで隠していたのを
忘れていた。これはアレだやましい本をベッドに隠したけど
母ちゃんに見つかるときのアレ。それが一応あれでも女だ。
そいつに俺の癖がバレのだ。 彼女は移動教室に向かっていた。
どんな顔してあいつに会えば、いいのかわからない。マジで
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