矢島健の休日2

 俺たちはショッピングモールの中に入った。

 中は空調が効いていて涼しくなっていた。

 辺りを見渡す限り服、雑貨、インテリアなど多数のお店が所狭しとある。

 その他にも飲食店や家電屋など大抵ここで買い物すれば大体のものは揃って

 いる。

 俺は母ちゃんズセレクトの服がほとんどでこういうところに縁遠いため

 全くどういう店を見ていいのかわからん。

 俺に選ばせるとユニクロ産100%になってしまうからな。

 いいでしょ別にユニクロ。コスパ最高だよ。


「それにしてもお兄ちゃん、あの人きれいだよね」

 前を歩く桜井について隣を歩く有希が言及してきた。

 確かに見た目は悪くないのだ。

 あいつを見た全員がきれいだとか美人というに違いない。

 現に歩いている何人かはあいつのことを見ているしな。

 しかし中身も大切だということを俺はこの二ヶ月で嫌というほど知っている。

 もう慣れたが口を開けば俺の嫌味が帰ってきたり、何かつけて

 勝ち誇ってくるのだ。全く嫌味な女だぜ。

「ああそうだな。でもお前の方が可愛いぞ」

「いや、そういう冗談とかいらないから」

割と真面目に言ったのだがあしらわれてしまった。

 やはり身内だからだろうか、はたまた日頃の態度のせいなのか

 こいつも俺に対して嫌味なことを言うのだがあまり気にならない。

「本当に何かないの」有希が聞いてきた。

俺は今まで女子の浮いた話も無ければ、友人関係になったことなどない。

小中の班行動の時くらいしか女子との接点を持たなかった。

俺は孤高に生きていると言うとなぜか妹が泣いてしまったのはいい思い出だ。

「これと言ってないな」

自分でいって悲しいのだが、思い返してみるといつも言い争いをしている

印象しかないな。

有希よ、そうがっかりするな、お兄ちゃんは妹さえいればいいのだよ、今のところ。


「そういえばその幸さんってどんな人なの」

有希はまだ会ったことがないからな。

「そうだなおバカキャラかな」

 良くあいつのグループでも可愛がられている。可愛がると言ってもしごくとか

 しばくとかいうものではない、温かい目で子供を見る感じだ。

 桜井も話に参加してきた。

「あなたもそう変わらないじゃない」

 君からしたら、大抵の人は頭が悪いのよ。

「あそこまでひどくない」

やつに常識的な質問をしたのだが、ほとんど珍回答しか返って来なかったぞ。

「可愛らしいこよ」

いつもくっついているもんね、君たち。

確かに恋愛経験のない男子高校生なら少し優しくされたら落ちるに違いない。

そして愛嬌があって誰からも好かれやすい。

しかし、長年こじらせている俺はそうそうに落ちないがな。 

「まぁ今どきのJKって感じだな」

何かにつけてスマホをいじる印象がある。それか友達ときゃっきゃっウフフフをしている。そういう意味ではうちの妹と大差ない。こいつソファーでごろごろしながら

雑誌読んだり、インスタ見てるからな。

「じゃあここらへんのフロアーを抑えておけば大丈夫そうですね。」

ショッピングモールのフロアマップを見て有希が場所を何箇所か選んだ。

俺は今どきのJKの好みがなんなのか全くわからん。

SNSが発展したことで流行りの入れ替わりが激しいため、

そういうのに疎い俺は置いてけぼりなるのだ。

まぁかくいう俺はそういうのに迎合しないのだが、妹は大歓迎です。

「とりあえずそこ見るか」

「ええそうしましょう」桜井も同意してくれた。


とりあえず洋服を見ることにした。

桜井は服をとり、伸ばしたり、引っ張たりしている。

違うでしょう、鏡で見るとか、合わせるとかあるでしょう。

なにコスチュームチェンジしたことないの?

「服は耐久性じゃないだろう。普段の服はどうしてるんだよ」

見てられなくなり突っ込んでしまった。

「とりあえず服にはあまり興味がないから母が選んだのを着てるわ」

まじか。大抵の女は服に興味があるだと思っていた。

「だから、どういう基準で選んでいいのかわからないの」

なるほどな。いくらこの女でも苦手なことはあるのか。

そういえばこいつ佐々木が言っている流行りのことばに

時々苦悶の表情を浮かべてたな。

「無難に明るい色ならいいんじゃないか。あいつ明るいし」

「そんな抽象的なことでいいかしら」

言っていみたものの女の服なんかどれがいいのかわからん。

服はその人のイメージカラーが反映されると俺調べだ。

俺は適当なTシャツなのでこの理論が当てはまるか。


「お兄ちゃん、これ見てじゃじゃん」

有希は派手なシャツを持ってきた。サイズ絶対違うでしょう!

ダメよダメダメ、不良になっちゃうでしょうが。

「おまえ、目的忘れてないか」

今回のミッションは佐々木のプレゼント選びだ。

「わかってるよ。それに服買うならセールの時に行くからいいの。

 なにか一言言った方がいいんだよこういう時は」

「まぁ似合うじゃない」

「適当~」

可愛いからなんでも似合うとかラノベ主人公みたいなこといえばのか。

しかし有希はしっかりしてるなと関心してしまった。

親戚でおばちゃんとか言われるだけある、いい意味だよ俺を養ってくれそう。

いかん妹ENDはいばらの道。

服は値段も張るし、プレゼントにしては難易度が高めなので

少し物色した後違う店に行くことにした。


次はインテリア雑貨の店に来た。

なんかインテリアと聞くとオシャンティな人しかいけない不可侵的な領域に

思えてくる。店内は淡い色を基調としており案外落ち着いている。

「小物か。まあ服よりかわプレゼントにしやすいわな」

「そうね」桜井も同意してくれた。

なんか適当に探してみるか。

店内をぶらついているとあるものをガン見しているやつがいた。

「にゃー」

何かに聞こえたけど、あれかな空耳かな。

「にゃ~」

うん、空耳じゃないな。これは声をかけるべきなのか。

「お前何してるの」

「何に急に話しかけるの、不審者かと思ったわ」

少し普段より早口な気がした。

「すまん、猫の置物みてるのか」

「ええそうよ、なにか問題でも」

語気も若干強めですな。しかもなんか目つきが怖い。

「いえなんでもないぞ。まったく」

少し萎縮してしまった。

さて俺は何したものか身につける系にするべきか、

どうしたらいい有希えもん。

「有希はどうしたらいいと思う?」

俺は辺りを見渡した。あれいない。

仕方ないのでスマホで連絡を取ることにした。


そうしたら

「私みたいところあるから先帰ってもいいよ」

とラインでメッセージが返ってきた。

ちょっと勝手過ぎませんかね。

突然呼んだのは俺なのだが。

あいつも俺と同じで単独行動とりがちなところがあるのだ。

そんなところ似なくてもいいのに。

「有希のやつどこかに行きやがった」俺は桜井に報告した。

「妹さんを突然呼んでしまったのだから、別に構わないわ。

 それにこのフロアを中心に探せばいいのだとわかっただけでもいいじゃない」

確かに俺たち二人だけでは的を絞ることさえ困難だったからな。


「あれ美奈子」

俺はこの声がする方へ目を向けた。

そこには今回の目的人物佐々木がいた。

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