ココアの戯れ
俺はリビングのソファーで横になりながら、ゲームを
しているとココアが俺の足の上に乗っかってきて、遊んでくれてと
言わんばかりはぁはぁいいやがる。
ココアがくりっとした黒い目でこちらを見てくる。
こいつは佐々木が休みの間に預かって欲しいと言って預かった
茶色の毛のミニチュアダックスフンドでオスのココアだ。
*
ココアが来たのは、昨日の昼間だった。
「すみません、佐々木です~」
「あっ、幸さん、今でますね」
インターンフォン越しに有希と佐々木がやり取りを
していた。
「こんにちは有希ちゃん、ココア預けに来たよ」
有希が玄関の扉を開けて、佐々木を迎えいれた。
夏ということもあり、半袖にハーフパンツと
涼しい装いになっている。それに抱えてケージには
ココアが入っている。
「どう~も幸さん、兄がいつもお世話になっております。
ほら、お兄ちゃんもあいさつして」
「うん?、あ~よ」
「それ、あいさつじゃないよ、お兄ちゃん」
「私はぜんぜん気にしてないよ、いつもことだから」
なぜだろう、今少しだけ肩身が狭く感じた。
「すまんな、俺今マッチしてる最中だから後にしてくれ」
今、俺は4対4の対戦をしており、前線でボムを投げて
相手陣地に牽制をしている。今、2対3とこっちの陣営が勝ち越して
おり、後に一分でこちら勝利するはず。
「ワン、ワン!はぁはぁ」
ココアがこち見て、尻尾をふりながら、アピールしてくる。
遊びたないのはやまやまだが待ってくださいよ。
ココアが作戦変更だと言わんばかりに、俺の足からぺたぺたと
移動して、俺の顔を近づいてペロペロと舐めていきた。
舌からほのかに熱が感じくすぐったい。
「ちょっと近い画面、見にくいって、あ」
ココアに集中しており、操作が止まっていた。
パンと銃声で聞こえ、俺のキャラクターの頭が撃ち抜かれてしまった。
格好の的になってしまったのだ。
結局、逆転で攻められて負けてしまった。
「はぁ~まじか」
俺は負けた喪失感でゲームをテーブルに置き、だら~とソファーに横たわった。
もう今日はやめだ。
「くぅ~ん」
そんな俺の落ち込みを察したのか、ココアもさっきとは打って変わり、
落ち込んでしまった。飼い主に似て気持ちを察するとうまいらしい。
「お前せいじゃないから気にするな。ふ~気晴らしに散歩にでも行くか」
ココアの頭をわしゃわしゃなで、ソファーから立ち上がり、
首輪とリールを持って来てた。
俺の動作を見て、散歩に行くことを察したのか、ワンワンといいながら
俺を後をついて来た。
首輪とリールをつけて、玄関を出るとココアは勢いよく走り出した。
よほど遊んでもらうのが嬉しいらしい。
「おい、いきなりアクセル全開かよ、ちょっと待てよ」
俺は苦笑いをしながら、元気に前を走るココアについて行った。
ココアの行き先は家から歩いて6分ほどにある上里公園だ。
ここは2kmあるランニングコースもあり、植えられている
木々を見ながらほのかに自然を感じられ、元気なココアを
走らせるには最適な場所だ。車も通らない、安全だ。
未完の青春 カズマ @zizelu
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