矢島健の憂鬱3
中庭で佐々木と別れ後、俺は教室に戻ることにした。
「はぁ、それにしても階段をのぼるのめんどくさいな」
溜息まじりに階段を登っていく。 1歩1歩足が重たい、
普段運動していなからだろうか。そして1年の教室は3階にあり、
正直行ききが面倒くさい。
そんなことを考えていた矢先、前から髪の毛をたなびかせながら
体操着の女子生徒がダダダッと階段を勢いよく降りてくる。
ぶつかりそうなになったので、階段の端に避けた。
「おっとごめんよ、少年!」
女子生徒はこうつげ、2階から階段を駆け足で降りていく。
あぶなね、まったくせわしないな。
「里見はやく!遅れるよ」下の階から女子生徒の友人が声をかけた。
「いまいくよ!」降りて言った女子生徒が友達に返事を返した。
さっきの人先輩だろうか。それにもいいにおいがしたな。
あと出るところが出てしまると所はしまっている、いわゆるデルモ体型だった。
それにしてもいい胸をしていた。いかん、いかん。これじゃあまるで変態だ。
教室に戻るとクラスメイトの笑い声でそこかしこでしていた。
俺は大人しく自分の席に戻った。
***
先生がイオン結晶の溶解について説明をして
いたが集中できていない。
さてどうしようか。なんていって櫻井に謝ればいいんだ?
それにあいつと会う機会をどう作ればいい。
てかあいつの連絡先知らないわ。
以前、あいつに連絡先の交換を試みたことがあるが、
いやよの一言で即断わられたから。
くそ、どうすればいい。頭の中で思案をしながら、
椅子にもたれかかったとき、後ろの席で頭を抱えながらも一生懸命授業を
聞いている佐々木の姿が見えた。
そうか、佐々木ならあいつの連絡先を知っているかもしれない。
これで取っ掛かりを作れそうだ。
授業後、俺は佐々木に声をかけた。
「なあ佐々木」
「うわー!びっくりした。後ろから声かけてこないでよ」
俺が声をかけると彼女はのけぞった。
「すまん」
佐々木さんや、そんな驚かなくてもよくない。
「どうしたのやじまー」彼女がそう問いかける。
「桜井と話したのだがどうしたらいいのかわからん。
今朝のことで話したいのだが、どう約束を取り付けばいいものか」
授業中に考えていたが一向にいい言葉見つからなかった。
「普通に声掛けばいいんじゃないの?」
普通の時ならそれでもいいのだ。
「気まずいというか、どういう顔して会えばいいのか」
「あっはは、今朝のこといろいろ言ったからね、お昼に」
今朝の一件を知っている佐々木は困り顔していた。
なにを言われたのか気になるが、想像できるからなあ。
たぶん、あなたの性癖を見られるこっちに身になって欲しいわと
言っているに違いない。
「う~ん、とりあえずやじまーが話しあることを
それとなく伝えればいいのかな」頭を悩ませながら佐々木は言った。
「ああ、それで頼む」
「オッケー、わかったよ」
そういって彼女は教室を出ていった。
5分後、佐々木が教室に戻ってきた。
どうやらあいつと話して放課後、裏庭で落ち合うことになった。
***
放課後、空はもうオレンジ色に染まり、影が色濃くなり、
グランドや体育館で汗水たらして頑張っている声が聞こえる。
裏庭にいくと一人明らかに不機嫌そうな女がいた。
仁王立ちで澄まして姿は一種に凄みを発していた。
「よ、待たせな」とりあえず、櫻井に俺が来たことを認識させた。
彼女は明らかに
「あなた、よくもわたしにやましいものをみせてくれたわね」
やはりご機嫌ななめのようだ。やばい、なんて言えばいいんだ?
「すまん」櫻井に向けてお辞儀をした。色々を言葉を考えているが、
まずは謝罪が大事だ。
「本当に読ませたい本はあったんだが、うっかり間違えてしまった、悪い」
自分で言っていて情けなくなり、彼女から少し目線を逸らす。
「あなた、ちゃんと目を見て話しなさい」彼女は至極ごもっともなことを言った。
お前は先生かよ。
「さして知りたくもない、あなたの癖を見せられてもね。それにすぐ
男に体を許す変な子現実にはいないわよ。現実をみなさい」
彼女は俺に向けて下種を見るような虚んな目をしていた。
俺が間違えて渡したのは主人公に割りとはやく惚れて、いろいろと奉仕
してくれる系の作品だ。
お前も十分に変なやつだよ。
「現実かどうかの区別くらい俺にもできわい」
てか本でくらいいい夢を見てもいいだろうが。
「とてもそうには見えなくないけど」
俺は櫻井にそんなことは分かっていると言っているのだが、理解してくれていない。
ひどい言いようだ。現実なんてクソゲーとか思うが、まるで将棋みたいだと言って無双する夢は起きないことくらいはわかる。
「さて、あなたの対処についてだけど、どうしたものかしらね」
桜井はさっきとは打って変わってなんだか企んでる顔している。
怖いよ、何されるの俺。
「とりあえず何か埋め合わせをさせてくれ」
軽く怯えた俺は埋め合わせで穏便に済ませようとした。
ここはひとつ菓子折りや償いのひとでもした方がよかろう。
オヤジ直伝、謝罪際の菓子折りセレクションを披露する時か。
「そうなら今週の日曜日、付き合いなさい」
櫻井は業務命令のいうかの如く、俺を命令してきた。
付き合う?買い物か?まぁ日曜日は空いているけど。ゲームしかしてないしな。
「へ、いいけど、何にするわけ?」
困惑している俺は櫻井に質問した。
「そう、ならいいわ。詳しいことはまた後日ということで。またね、矢島くん」
そのたなびく後ろを揺らしてながら、櫻井はその場を去っていた。
「てっ、おい待て。まじかえぇー帰るのはやくないか」
虚しくもこの声は届いてはいなかった。
「とりあえず、帰りますか」
そう言って俺は裏庭を後にした。
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