[9話]矢島有希の支度

 7月、太陽がフル稼働していて外出たくない季節になった。

外ではセミがミンミンとしてうっとうしい合奏を奏でている。

定期試験も終わり一学期の残りあとわずかになった。


 夏休みに入れば、俺は家でのんびりすることができるはず。

それにしても今学期は、変わった知り合いが増えた気がする。

ぼっち歴の長い俺してがんばったはず、多分。


「おはようお兄ちゃん」

「おう、おはようさん」

一階に降りてくると有希がちゃっちゃか朝ごはん、弁当を作って

いた。俺が小学生の時まで朝ごはんや弁当を作っていたが、

有希が小学生になった時に、すでに俺の料理スキル、まあ

手際のよさが負けてしまったため、俺のお役目ごめんに

なった。まぁ別に悔しいとは思わない寧ろ妹のご飯が

食べれてお兄ちゃん的に嬉しいまでである。


「有希は夏期講習はどうするんだ」

「う~んそうだね、そろそろ塾に行こうかな」

来年が中学3年で受験になってしまう。大体の子はこの時期から

少しずつ準備して行くだろう。

それは矢島家でも同じ、てか俺が大体そうだったから

きっとそうなるはずだ。

「はぁお兄ちゃんがもう少し頭が良ければ、付きっきりで教えて

 あげられたんだけど」

「いいよ、お兄ちゃん文系しか得意じゃないでしょ、てか付きっきりは

ちょっと遠慮しておく」

「何に遠慮することがあるだよ」

「だって有希がこれ以上お兄ちゃんの相手をしないといけないでしょう。

そろそろ誰か襲名してくれないかなこの役目」

いや矢島屋とかじゃないし受け継ぐものでもないから。めんどくさいとか

ショックなのだが。


「お兄ちゃんこそ、成績ヤバいじゃないの」

「いいんだよ、2年になったら、理系科目やらないし。文系と社会系は

そこそこ取れてるからな」

「でもまだ1年でしょ、どうせ赤あるんだから、補習とかあるじゃないのか」

「なんで赤があるとか知っているんだよ。誰情報だよ」

「それは内緒です♡ほら、ご飯食べて準備して」

はぐらかされた。しかないので、飯食って準備するか。







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