彼女の毒は、甘い蜜。『不可能』を『可能』に、夢を叶えたお姫様の物語——

 ギュンターローゲ王国の第三王女、アウゲ・ギュンターローゲ姫。
 彼女は全身から毒を放出し、その存在自体が周りの人間を蝕んでしまう、通称『蠱毒姫』。
 王家の決まりに従い、アウゲは18歳の誕生日に魔王のもとへと嫁ぐ事が決まっていた。

 自分の毒で周囲の人間に害が及ぶのを嫌い、しかし気高く、どれだけ内心傷つこうとも凛としている彼女の前に、ある日現れたのはこれまでの世話人とは全く違うタイプの護衛騎士ヴォルフ・フォンレドルで——。

 人と当たり前に触れ合うことも、話すことすら許されなかったお姫様と、そのお姫様ににこにこと付き従い、一つひとつ心の棘を溶かしていくようなヴォルフとの交流は読んでいてこちらの心も温まるほど、とても微笑ましいです。

 様々な場面の景色、移りゆく季節、建物の様式。
 煌びやかさと質素さ、艶やかさと仄暗さの混在をこうも美しく表現し、まるで目の前に実際に広がって見せるかのような描写は必見。
 
 その毒に心までは蝕まれなかった美しい姫、しかし18歳の誕生日は刻一刻と近づいてきていて……。

 物語の冒頭から所々に仕込まれたギミックに、ラストの一文その時まで「あぁ……」と感嘆のため息がこぼれそうになるクライマックスはお見事。

 青い薔薇には「不可能を成し遂げる」等といった素敵な花言葉が存在します。
 彼女にとって「毒」とは、もしかすると「祝福」だったのかも——。

 美しく、とてつもなく素晴らしい物語です。
 是非アナタも、この物語の毒に浸ってください。

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