心理学とは ~基礎と応用~

 わたしが個人的に一番読んでるジャンルはこの心理学系統の本ですので、まずはこの話題を取り上げようかなと。とはいえ題名の通りの話題について話すと3000文字どころか本1冊ぶんになってしまうので、本日は『心理学のジャンル』を軽く紹介する程度に止めようと思います。


 そうなんです。心理学とただ一言で申し上げてもこの世界には様々な『〇〇心理学』が存在するんです。それらを大まかに理解するために、まずは『基礎心理学』と『応用心理学』について説明していきましょう。




 まずは『基礎心理学』についてですね。字面から察しが付くでしょうが、これは『科学的な根拠に基づいて人間の心理を解き明かしていく"学問"』になります。主に大学や大学院、専門の研究所にて研究が行われ、精神過程を理解するための新しい方式の開発や、理論を定式化し検証していくものを指します。言うなれば『研究・知識の探求』こそが基礎心理学の本業ということですね。


 では『応用心理学』とはなんでしょうか? これは『基礎心理学によって明らかにされた知識を用い、不安やうつ病などの問題の解決、経済マネジメント、学校教育や司法制度の改善、政治軍事への活用』などを網羅的にまとめたものです。文字通りの『応用』ですね。しかしこの分野は基礎心理学の成果をもとにあれやこれの手法を考え出しているので、必ずしも「これで正確に人の心理がわかる!」ということはありません。


 人間の心はわりと複雑なものですから、断定するレベルまで解き明かすのであれば複数の心理テストなどを実行し、なおかつ専門家による意見交換や多くの議論を乗り越えた末にようやくそれらしい結論が導き出せるといった程度でしょう。あくまでも『心理学の〇〇理論に基づいた手法』ということであって、必ず心理が読み解けるというわけではないことを覚えておいてください。




 そもそも基礎心理学は『科学』です。科学とは日常にある様々な現象に『仮説』をたてそれを『検証できる実験』を設計し実践。得られた情報を『統計化』し正しく読み取った結果『ある事柄に対する結論』を論文として発表します。


 論文として発表されたそれは多数の研究機関から評価され、別の研究機関でも『同じ条件で実験(追試)』され、論文に導き出された結果と同じ結果が数多く見られた場合のみ『科学的根拠がある』と認められるわりと遠い道のり。だからこそ科学というのは素晴らしいのですよ。


 では具体的に基礎心理学ではどんな研究がされてるのか、そのほんの一部を紹介しましょう。




 『実験心理学』はまさに科学的根拠を追求する心理学の研究です。人間や動物などを実験対象とし、それらに様々な心理的アプローチを仕掛けます。テレビ番組の『ドッキリ』のような感じになるのですが、心理学の研究を人間対象としてやる場合は『その実験の意図』がバレてはいけません、っていうのはわかりますよね? なのであえて本題は漏らさずに隠します。例えば10人程度の人数をひとつの部屋に待機させておき「これから呼び出しますので順番に別の部屋に来てください」とでも言っておきます。で、参加者が呼び出されるのを待っている時、急に部屋に『赤い帽子、緑のシャツ、紫のジーンズに茶色のブーツ、男性』が急に部屋に入ってきてダッシュでその場を後にしていった――実はこれこそが実験で、参加者は「急に部屋に入ってきた方の特徴はどんなでしたか?」なんて聞かれるわけです。それをどのくらい覚えているのか、それとも『記憶をでっちあげたり偽りの記憶を作ってしまうのか?』なんてことも観察されるのです。これぞまさに心理学的研究。


 実験心理学はこのように様々な『心理学の研究に使えそうな実験方法を考案する』という役割も兼ねているので、あるいは『基礎心理学』よりも前の段階に位置するかもしれません。まあそのヘンの詳しい話は後の楽しみにしておくとして、他にも人間関係や社会関係の心理について研究する『社会心理学』。人間が外部の情報を感覚器官でどのように感知し、どう処理するのかを研究する『認知心理学』。人間の成長に従って心がどう変化していくのかを研究する『発達心理学』。いや、そもそも人類は遠い昔から存在していて、現在に至るまでの過程で心という"機能"を得てきたんだという『進化心理学』まで基礎心理学は多種多様です。もはや心理学の一言では片付けられないほどに分岐しているこの世界、誰かぱぱっとまとめてくれませんかねぇ……。


 まあいいでしょう。続いてはそれらの成果を活かす段階に入りましょう。




 『応用心理学』でもっとも知られているのは『臨床心理学』でしょう。心理的な問題や精神的な疾患に悩む方に対し、臨床心理士は問題解決のため様々な手法を試します。心理学は"精神科医"ではありませんので『薬の処方はできない』のですが、基礎心理学で得られた様々な手法を通してクライエント(心理学の世界では患者をこうよびます)へアプローチすることになります。『認知行動療法』をよく扱い、これは精神的疾患に悩む方以外の人でも非常に役立つ知識ですので、みなさんも一度試してみてはいかがでしょうか?


 例えば『感じている不安をノートに書く』という手法があります。実はこれだけで"不安の半分は解消される"とさえ言われるすごい方法でして、人間は『わからない問題』というのをすごく嫌う生き物なんですよね。ですから『今、自分は何に悩んでいるのか?』というのを頭の中を整理して、実際に紙に書くという行為で"表現する"ことによって『わからない問題』という不安が払拭できるのです。しかも、ノートに書くとそういった不安を『外に出して忘れる』ことができます。心の中にあるモヤモヤとした不安は、一度紙に書き出してしまって吐き出してしまいましょう。


 あ、ちなみに「テスト前日なのにテスト勉強してない」っていうのは『テスト勉強してないから点数が低いのは仕方ない』という言い訳をつくるための『自己防衛機制』の可能性のほうが高いのでちゃんと勉強してくださいね?


 応用と冠するだけに、これらのジャンルも基礎心理学に負けず劣らず多種多様です。効率の良い学びの提供や何らかの問題を抱えている子へのカウンセリング法を研究する『教育心理学』。社会心理学の知見を用いて経済や産業に活用する『産業心理学』。犯罪の容疑者をプロファイリングし特定したり違法行為をした犯人の刑事責任能力を明らかにするための『司法心理学』。政治が人間の心にどのように機能し影響を及ぼすのかを追求する『政治心理学』など、もはやジャンルが多様すぎてどれがどれだかわからなくなっているんじゃないの? ってレベルです。




 近年はfMRIなど、脳の電流を観察できる手法が台頭したことにより、心理学は『脳科学』とより密接なつながりをもつようになりました。なにせ『心とは脳のあれこれ』ですので、脳の状態を知ることは人間の心理を知ることとほぼ一緒だともみなせます。『音楽心理学』の分野では、演奏家に曲を奏でてもらい、それの演奏に際して脳がどのように働いているのかを分析することも可能になりました。その時に面白いことがわかり、なんと素人とプロでは『使っている脳の領域が明らかに異なっている』ということがわかったのです。これってすごい発見ですよね?


 『心=脳のあれこれ』は今後心理学に興味を持った際とても必要になる要素ですので覚えておいて損はないでしょう。知れば知るほど深淵が遠い心理学の世界。アナタもぜひこの扉を叩いてみてはいかがでしょうか?

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