野球のルール:第4のアウト
タイトルを見て「は? 野球は3アウトまでだろド素人か」と思っているアナタ、もうちょっと野球のルールについてお勉強していきませんか? あ、いやまあ、実際野球のアウトカウントは3つまでなんですけど、守備側は『3つめのアウト』をどれにするかで、そのイニングの最終結果が変化してしまう場合があるのです。
さて、ここでみなさん『1アウト1、3塁』という状況を考えてください。攻撃側からしても守備側からしてもややこしい状況ですね。攻撃側はゴロゴー、盗塁、スクイズ、エンドラン、ヒッティングによる犠牲フライなど様々な想定ができますし、守備側もゲッツー、バックホーム、あえて敬遠して塁を埋めるとよりどりみどりです。わたしがキャッチャーならひとまず牽制でも入れますかね。まあ結局はバッターやランナーの能力によりけりなんですが……。
ここでひとつ、攻撃側がエンドランを仕掛けたとしましょう。打球はライナー性になりショート正面へ。ノーバウンドでキャッチされたので2アウトになりました。
しかし、ふたりのランナーは良いスタートを切ってしまいサードランナーはすでにホームを踏み越え、ファーストランナーもセカンドに進んだ段階です。
このとき、ランナーには『リタッチの義務』が生じます。経験者だったらまず「フライを捕られたら元の塁へ戻れ」と教わると思います。ちょうどよいところにいたショートは、そのままファーストランナーにタッチして3アウト。『アピールプレイ』の成立です。これでそのイニングは終了し、守備側は悠々とベンチに戻っていきます。
ところがどっこい、そのイニング0点のはずがスコアボードには"1"の文字があるではありませんか。
えー、さっき申し上げた通り、リタッチの義務を怠ったランナーに対しタッチする行為は『アピールプレイ』です。わかりやすくいうと「ちょっと審判! こいつルール無視してるからアウトにしてよ!!」って審判にアピールしているんですね。ランナーは元の塁に戻らなきゃいけないルールを破っているので、それを守備側がアピールしているのです。
実はこの時、アピールをしないと審判はアウトにしてくれません。ですから、たとえば『タッチアップで1点がはいった!』っていう状況のとき、守備側の抗議として「ちょっと塁を離れるの早かったんじゃな~い?」ってやるの、たまにありますよね? わたしゃぁ2006年のWBCで日本がアメリカの抗議によりアウトにされてしまったことを今でも強烈に覚えていますわよ?
――閑話休題。リタッチの義務を違反しても、アピールがなければ審判はスルーでします。なぜならリタッチの義務違反はアウトというルールではないからです。やっちゃダメだゾ☆ っていう表記があるだけでアウトになるとは書かれていませんから、守備側がアピールしなけりゃぶっちゃけフライが上がってる最中にダイアモンドを1周しちゃってもええんですわ。
審判は攻撃側、守備側を平等に扱う存在ですので、ルールで『こうしないと"アウト"になるよ』という記述がなければ攻撃側の人間にアウトを宣告することはありません。よくある、フライアウトの後帰塁が遅れて送球が間に合った! というのは、そのプレー自体が"明示的なアピール"になっていると審判が判断しているからです。
つまり、『ルールとしての義務はあるが、ルールブックには(=アウト)とか(=セーフ)などのジャッジの規定がない』のです。守備側が相手が違反したことを審判に主張しアウトにしてもらうっていうちょいややこしいルールなのよ、これが。ざっくり一言でまとめるならば
~相手の違反を審判に指摘してルール上平等な状況にしてもらう~
って感じ。例えば『タッチアップ』。ランナーが捕球のタイミングより速くスタートした場合、守備側は審判に対して『塁を離れるのが早かった。リタッチの義務を果たしていない』という主張をすれば、審判は対象のランナーに対してアウトを宣告します。ホームインしてたとしても、その得点は無効化され晴れて平和な終焉を迎えちゃうわけよ。
さて、ここで冒頭の状況を思い出してくださいな。1アウト1、3塁にてショートライナー。ファーストランナーをそのままタッチしアピールによってアウト、合計3アウトでチェンジでした――おやおやぁ? サードランナーはスルーですかぁ?
はい、これ1点になります。なんでって? だってアピールしてないじゃん。きちんと「審判さーん! あのサードランナー違反してますよー!」ってアピールしないとダメなんですよ。アピールしないと通常のプレーとしてスルーされちゃうのでしっかり目をつけておいてね。
ルール上、アピールする権利は『内野手全員がファールラインを超える』もしくは『次のプレーが始まる』と消失します。つまり、3アウトだやったーってベンチに戻ってる時点で時既に遅しなんですわ。
いやでも3アウトにしちゃったし、どうやってその後の1点を阻止するの? って話になりますよね? そういう時のための『第4のアウト』なんです。野球では第3アウトの置き換えなんていう言葉があるのですが、今回の例の場合、とりあえず3アウトをゲッチュした後もとりあえずサードランナーに対するアピールもしましょう。
やりかたは簡単です。ランナーはホームインしてベンチに戻ってるでしょうから、とりあえずボールを持った選手がサードベースに触れて、3塁線審か主審に対し「サードランナーがリタッチの義務を果たしてません」とアピールした上で「3アウトをこちらに置き換えます」と宣言してください。これで、ルール上の『3つめのアウトがサードランナーに置き換わります』。これで完璧。やったね!
さて、第4のアウトに関する説明はこのくらいでしょうか。ちなみに、審判はこういった特殊な状況に対する心構えのために『審判間のコミュニケーションサイン』が存在します。インフィールドフライがあるから気をつけようねとか、タイムプレイがあるから気をつけようねとか……お父さん、たとえ学童野球の審判だろうが草野球の審判だろうが、そういう特殊な場面をしっかり見てなかったせいで正確なジャッジができませんでしたはめっちゃ冷たい眼で見られますからね?
これは俗に『ルールブックの盲点』なんて言われたりするのですが、これは単純に守備側のアピールプレイというだけの話なので、そこまで大層な言葉を使わなくてもいいっちゃあいいんですよ。審判は全て見ていますし、守備側がそれを知らなかったのであれば、すなわち『アピールして3アウトの置き換えをする行為を放棄した』というだけの話なので。
ちなみに、これは豆知識というにはあまりにも衝撃的なルールなので、ちょっとでも調べたらすぐに出てくるほどの有名なものになってます。ですから『第4のアウト』とか『ルールブックの盲点』とかで検索すりゃもう雨あられのようにヒットします。動画で見るのがわかりやすいと思うので、とりあえずYoutubeにでも赴いて検索してみてくださいな。有名なのは『鳴門 対 済々黌』か『ドカベン』かな?
みなさんによき野球ライフがあらんことを!
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