宇宙の歴史 ~10のマイナス36乗秒からはじまる世界~
タイトルの秒数は、現代科学で導き出せるようになった、宇宙の起源に迫る時間です。宇宙誕生の瞬間はまだ科学による実証がされていませんが、少なくとも10の36乗秒以降は予測できるようになった、というわけですね。
しかしちょっとまってください。10の36乗秒ってことはつまり1.000... ――0が36こくっついた先に1がつく。それはもう、ほぼ0秒って言っちゃっていいんじゃね? とさえ考えちゃうようなものすごく短い時間です。けど、世の中の宇宙科学者たちはその程度では満足できないんですよね。もうなんていうか「宇宙のナゾを完全に解明するまで、わたしたちは諦めない!」みたいな、即落ち2コマが似合っちゃうくらいの信念をお持ちでいらっしゃいます。事実として、宇宙に関する学問は緻密な計算の上になりたっており、ほんのちょっぴりでも数字が異なればその後の世界はとんでもない振れ幅で可能性をぶち撒けてくれるでしょう。カオス理論とでもバタフライエフェクトでもなんでも表現してくれて構いませんが、もうとにかく宇宙ヤバイのですよ。
前座が過ぎましたね。本日はカクヨムで宇宙に関するお話のさいしょということで、これまでに明らかになった『宇宙の歴史』について紐解いていこうかなと思います。
っと、このお話をする際に『マルチバース』とか『多次元宇宙論』まで考えるとさらに頭が混乱してしまうので、ここでお話するのはあくまでも『わたしたちが暮らしている宇宙』の歴史に限らせていただきます。いまわたしが何を言ってるのかわからないって方はとりあえずスルーしてください。
こういう話を書く場合、とりあえず宇宙研究の歴史になぞらえて判明したことを順番に説明していくのが筋だと思うのですが、ここは現代科学で判明した事実と結論から淡々と書いていきましょう。
まず、宇宙には何もありませんでした。これは文字通り『無』です。いえ、この表現ですらまだ足りません。なんせ、そこには無どころかその枠組である『』さえもなかったのですから。
おいおいちょっと待てと。なにもないんだったっら宇宙なんて誕生するわけないじゃないかと誰もが思うことでしょう。わたしだって思ってますよ。でも、宇宙の研究者たちはその状態からでも宇宙が誕生する可能性があるって言うんです。
宇宙には『真空エネルギー』というエネルギーがあります。いえ、ないんですけど、ある瞬間ふわっと現れる場合があるんです。しかも、この真空エネルギーの量は『無限大』になりえます。これをまとめると『無の空間には無限大のエネルギーが生まれる可能性がある』ということ――わけがわからないよ。さらにわけがわからないのが、この真空エネルギーの存在が実際に観測されちゃったという事実ね。
つまり、世界は『無』でありながらも、そこになんらかのエネルギーが発生する余地があった。これが現代の宇宙論で考えられる"0"の段階――最も古い時間軸の宇宙です。
かの『アルベルト・アインシュタイン』氏が発表したあの『相対性理論』から考えれば、宇宙にはきちんとした『はじまり』が存在すると言います。そのはじまりを求めてたくさんの物理学者や量子力学者たちがペンを手にとったのですが、残念ながらまだ、だれもが認める『宇宙誕生の瞬間はコレだ!』という論は誕生していません。その代わり、タイトルにある『10のマイナス36秒前』の世界まではコレでいいんじゃない? という理論が発表され、世間でも受け入れられて現在では『宇宙の標準モデル』という、万人が認める宇宙の歴史に位置づけられています。では次はその理論である『インフレーション』をご紹介していきましょう。
インフレーションは、宇宙が『10のマイナス36~36乗秒』までの間に急激に発生した宇宙の加速膨張現象です。上記の真空エネルギーが相転移を起こし、エネルギーの密度が膨れ上がったことによって世界は急激に膨れ上がりました。
相転移というのはみなさんもご存知でしょう。あの『水』が『氷』やら『水蒸気』に変化するあの現象のことです。状態が変化することでその物質のエネルギーは変化します。これをもっと深く掘り下げていくと『自発的対称性の破れ』というのを説明しないといけないのですが割愛。ざっくり言ってしまえば『世の中の物質は対照的な、キレイな状態を保っていられない』という理論になります。キレイな状態を保っていられなくなった真空エネルギーが相転移を起こして宇宙全体の途方も無い高エネルギーが互いに押し付け合う結果になり、最終的に宇宙の爆発的な膨張現象に至ったというわけです。それを上記の時間内で発生させた――真空エネルギーの強力さがうかがえますね。
宇宙がインフレーションを起こすことによって、この世界は一気に広がっていくことになります。ただし、それだけではまだまだこの宇宙の広大さを表現しきれません。インフレーションのその先には、まだまだとびっきりのイベントが控えていますよ!
ビッグバン。この言葉は宇宙に興味ない方でも知っているかもしれません。戦後、ロシア出身でアメリカの物理学者というなかなかハイブリッドな方が唱えた理論で、要約すると『超高熱高密度のエネルギーが突然爆発を起こして宇宙が誕生した』という説。これには当時の研究者たちは賛否両論で、実はこのビッグバンという言葉も、ある批判的な学者がこの説を笑う意味で「大きなバン! だってさ」みたいなニュアンスで広めた言葉だったりします。が、この説は最終的に『宇宙マイクロ背景放射』という宇宙に一様に広がる光を根拠に定説とされるようになりました。
実は、インフレーションよりも前にこのビッグバンが提唱されたんですね。で、このビッグバンがどうやら正しい理論のようだ。しかしそれに至るまでの過程、つまり超強力な火の玉はどうやってできたんだ? というナゾや、計算上いろいろな不都合があって、それを解決しようと考えられたのが上記の『インフレーション』です。インフレーションはビッグバンの不備をうまく補う結果になり、さらに宇宙の起源を極限まで追求できる理論となりました。このふたつの理論が、現在の宇宙をつくりだしたおおきなイベントとなっております。
それからの宇宙は少しづつ冷えていきます。世界にあった物質はあまりにも高熱すぎたので、密度がいくら高くても、はじめは結合して『原子』をつくることさえままなりませんでした。しかし、空間が広がっていくに従い熱が減少し続けることによって、徐々に物質が自由に飛び交いそれぞれ結合できるようになってきたのです。この時、光を司る『光子』が自由に移動できるようになった瞬間の名残りが上記の『宇宙マイクロ波背景放射』です。ビッグバンの正しさを証明してくれる現象ですね。
冷えてきた宇宙はやがて隙間ができるほどに広がり、それから重力の相互作用によって物質が一定の場所に集まるようになりました。この時はまだ、宇宙の物質は『水素・ヘリウム』と、ごくわずかなリチウムだけです。それから億単位の時間をかけて物質は集まり、それぞれが重力によって合体。『核融合反応』によってさらに重い元素へと進化していき、寿命が尽きたら重い星は『超新星爆発』によって世界へ飛び散っていきます。最重量級の星が放つ超新星爆発は、内部にある『鉄』などの重金属が飛び散っていくとき、他の金属などとぶつかり合うことでさらに重い物質を生み出しました。さらに、こういった規模で発生した『中性子星』が他の中性子星とぶつかった衝撃でもさらに重い原子が生まれ、現代宇宙はさまざまな原子が存在する世界となっています。宇宙生誕から138億年。それまでの歴史は、世の中に有る原子の種類によって感じることができるのですね。
最新科学の研究により、現在の宇宙は『0から10のマイナス43秒』の世界までも暴き出そうとしております。まだ理論が先行する分野ですが、技術の革新によって近年では『大型ハドロン衝突型加速器』が登場し、もはや宇宙の起源の解明は時間の問題となっております。
宇宙が『発生』したその瞬間、いったいどのような出来事があったのか? ナゾが大きいほど興味も尽きませんね! みなさんも、ふと夜空を眺めて広大な宇宙を感じつつ、そんなナゾに胸をときめかせてはいかがでしょうか?
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