【生物学】オスの三毛猫が珍しい理由【DNA】
生き物の形質、つまり見た目やらなにやらの特徴は『遺伝子』によって形作られています。わたしたちには日本人のDNAが組み込まれており、黒い髪の毛に平べったい顔、欧米の人々と比べ足が短めで胴が長い、など様々な特徴が現れます。人種によりその形質は様々で、白人黒人、わたしたち黄色人種など見た目だけでも『人間』にはこんなバリエーションがあるわけです。
もっとわかりやすいのは『犬』でしょう。わたしのとなりで寝息をたてている『ラブラドール・レトリーバー』、日本では有名な大型犬の代表『バーニーズ・マウンテン・ドッグ』、みんな大好き日本犬の代表『柴犬』、そして胴長短足が愛らしい『ダックスフンド』などまあ多種多様ですよね。同じ犬なのにこうも異なるのは、彼らの遺伝子にちょっとした違いがあるからです。ほんの些細な『ちがい』でこれだけのバリエーションが誕生するのですから、突然変異でミュータントが誕生してもふしぎじゃねーんじゃね? と思うのはわたしだけでしょうか?
さて、ここまでバリエーション豊かな生き物の遺伝子ですが、ちょっち『猫』ちゃんの例を見てみましょう。猫も『スコティッシュ・フォールド』や『アメリカン・ショートヘア』や『ロシアンブルー』など様々ですが、そのなかでも珍しいとされているのは『三毛猫の雄』です。実際ほんっっとに珍しく、よく言われる確立は3万分の1らしいですね。わたしは猫に関してそこまで知らないのですが、三毛猫好きの方はオスの三毛猫を見て興奮したりするのでしょうか?
そのヘンは置いとくとして、じゃあ『なんで三毛猫のオスは珍しいのか?』という疑問がありますよね。結論から言うと『クラインフェルター症候群』という、性別を決める染色体の数が1つ多い(X,X,Y)からなのですが、それをもうちょい深く掘り下げていこうと思います。じゃ、早速書いていきましょうか。
生物を形成するゲノム、人間で言えば23対46本ある染色体ですが、そのうち性別を決定する染色体だけは『X,Y』と別物の対を形成しています。実際Y染色体が男性化するために必要な遺伝子であり、男性の場合Y染色体がしっかり働いてみごとに『男性化』することができます。が、女性の場合『X,X』となり、もう1対のX染色体があれこれ活動されると困るので、片方のX染色体は不活化(ヘテロクロマチン化)されます。これは他の性別をもつ動物すべてに適応される"ルール"です。
女性の性染色体『X,X』のどっちかが不活化されるわけですが、どっちが不活化されるかはランダムです。で、三毛猫ちゃんはさらに、この性染色体に『毛の色を決める遺伝子』もいっしょに乗っかってるわけです。三毛猫と言えば『黒・白・赤茶(オレンジ)』の毛並みが魅力的ですが、赤茶の被毛を発現させる遺伝子が性染色体(X)に含まれているため、三毛猫はほぼ確実にメスだってことになります。さらに詳しく見ていきましょう。
三毛猫の"地毛"は黒です。で、白は他の染色体に存在するので問題なく発現するわけですが、問題なのは赤茶(オレンジ)の毛色。メス猫の場合、赤茶の色を出すための対立遺伝子(アレル)が存在『O,o』するため優性遺伝子と劣勢遺伝子の競合が発生、もし赤茶の遺伝子がヘテロクロマチン化されず残った場合は『黒・白・赤茶(オレンジ)』の毛並みをもった三毛猫が生まれます。が、オスに関してはX染色体が1本しかなく、片方が不活化されないためモザイク模様になることなく、赤茶の毛並みが表れることはありません。じゃあどうやったらオスの三毛猫が誕生するのか? という話ですね。それがはじめに書いた『クラインフェルター症候群』です。
両親から受け継いだ遺伝子のうち、メスは『X,X』染色体をもっていて、さらにそれぞれの染色体に『O,o』の対立遺伝子を持っていて、さらに赤茶の被毛を生むOの遺伝子が残れば三毛猫になります。オスの三毛猫は、この前提条件としてクラインフェルター症候群、つまり『X,X,Y』の遺伝子情報を受け継いだ状態である必要があります。まあ見方によっちゃ『遺伝子異常をもって生まれたかわいそうな猫』ではあるんですけど、人間が「珍しい! すごい!」っていうんだからいいんじゃないですかね? 実際ペットとしての取引価格はお家を買えちゃうレベルの高額らしいですし。
ちなみに『Y』の染色体を受け継いでいるので必ずオスになります。ただクラインフェルター症候群の場合精子の形成がうまく行えないため不妊になります。まあ『当代限りの珍しい猫』だからこそ更に珍しいことになります。人間からすれば希少性も相まってめっちゃ高級品ということになりそうですね。
三毛猫のメスが生まれるパターンとしては『赤茶(オレンジ)ブチのメス』と『黒ブチのオス』との交配が基本になります。あとは両者がウマいことヤって、できた子供のなかに三毛猫のメスがいるかもしれないですね。基本お目にかかれない三毛猫のオスですが、30000分の1を人間で例えれば、ちょっとした規模の市に1人くらいはいるレベルです。そう考えると『出会えなくもない』って感じがしてきますね。
ふと、自分が三毛猫のオスと出会った時どんな感慨に耽るのだろう? と妄想してみました。珍しい猫ですし、遺伝子異常をもっている猫ですから興味深く眺めると思います。マジマジと見つめた結果猫に警戒され、手を差し出したらメチャ引っ掻かれるまで想像して隣で寝ていた黒ラブにペロペロされました。
うん、いまの所は犬派だなと、わけもわからないことを考えているわたしです。
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