第6話 見つめていたあの子

今思うと昼に購買で起きたあの出来事はかなり青春イベントだな……とウチこと暮町いろりは苦笑いを浮かべながら思う。


ウチに昼飯が無いことを見越してか、特製オムそばサンドをくれた。同じクラスメイトの男子高校生。


確か、大麦拓くんだった気がする。


なんの特徴もない黒髪短髪。体格もいたって普通の男の子。けどそれがウチにとっては逆に印象深く感じた。


いや、自己紹介の時にあの子がウチを見つめていたのが印象に残ってたのもあるかもしれない。


とりあえず、あの子にお礼をしなきゃね。



★★★



気づけば、授業も終わり放課後になってた。


大麦くんにお礼が言いたかったけど、どうやらもう先に帰ってしまった感じだった。


ウチは席の近くで少し親しくなったクラスメイト達と別れ、教室を出た。



★★★



学校を出てすぐには、河川敷が見える。


ウチも引っ越してきてはや2週間が過ぎたが、ここの河川敷は居心地が良かった。


穏やかに流れる川のせせらぎ。河川敷の周りを覆う緑色。


川岸の方を見渡してみれば、小学生の子らが元気に野球をしていた。


のどかだなあと思いにふけりながら歩いていると、河川敷の橋の下から


「 みゃー 」


そこには、一匹の子猫がいた。……と一人の男子高校生だった。


ウチは橋の壁際に身を潜めた。


「 おー、よしよし。 今、ミルク入れてやるからな 」


( ……え? あれって )


間違いない、大麦くんだ。


どうやら子猫にミルクをあたえているみたい。


いつもあたえているのかな。子猫はかなり大麦くんに懐いてる様子。


「 え、暮町?な、なんで……? 」


しまった。気づかれてしまった。


「 あ、あはは……さっきぶりですね? 」


あかん。さっきは急だったためか、会話すら出来なかったからぎこちなくなってしまう。敬語だし。


「 お、おう…… 」


の大麦くんのその一言から私たちは沈黙の空間が始まってしまった。


は、はなさないと……!


「 あ、あのさー! 」


「 え? 」


「 とりあえず、折角出会ったのも何かの縁だし、あそこの階段で話ししない? 」


ウチたちはとりあえず話すことにした。









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普通恋愛。普通な男子高校生と女子高校生が結ばれるまでの話。 にゃこ @Heven2592

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