第4話 春と普通な女子高校生と出会い


今、ウチは新しいクラスの教室の前に立っている。


高校2年生、と言っても私は転校生。黒板の前に立って、自己紹介するという青春イベントがある。


正直、ウチはこういうのは、緊張して言葉かみかみになるので、苦手だった。


でも、ここで逃げるわけにはいかない。


出来たらウチは普通に平和に過ごしたい。


そんなふうにあたふたとしていても、当たり前だが、時間は過ぎていくもので。


ついに、その時がきた。


「 さあ、入ってらっしゃい! 」


「 は、はい 」


ウチは速まる鼓動を押さえながら、一つ深呼吸して、教室に入る。


そして、黒板の前に立ったウチは着席している、これからクラスメイトになる人たちを辺り一面と見渡した。


コソコソと小声で話している人。

おお……とウチの容姿を見て、感嘆の声を漏らす人。

興味が無いのか、窓の外を眺めている人。など。


いろんな反応が見られる。


っと、自己紹介しなきゃ。


「 皆さん、初めまして。 京都から引っ越してきました、暮町いろはです。 趣味は読書と喫茶店巡りです。 良かったら、こんなウチ……こほん、私と仲良くしてくださると嬉しいです。 一年間よろしくお願いします。 」


時折ウチと言いかけたが、ここでは、一人称は私にしておきたい。目立ちたくない。


一通り自己紹介を終えた後、改めて新担任からの紹介を聞きながら、ウチは一つの強い視線を感じた。


一人の男子高校生だ。


髪の毛は黒髪で特徴はこれと言ってない。体格は何かのスポーツをやってるのか筋肉質でしっかりしてる。顔つきは普通だが、優しい雰囲気を感じる。


なぜだろうか、ウチは自然と彼と目が合ってしまっても、不快に感じなかった。


それと同時に、彼とはこれから関わっていくような、そんな予感がした。



春、今ここで、一つの出会いが生まれた。


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