概要
すべり台の下、わたしとあなたの時間
すべり台の下が、わたしを世界から逃がしてくれる場所だった。
降りしきる雨は、世界を隔てるカーテンのようだ。
そんな場所で出会った一人の女性。
タバコの煙が充満する小さな空間で、わたしはきっと初めてを知る。
降りしきる雨は、世界を隔てるカーテンのようだ。
そんな場所で出会った一人の女性。
タバコの煙が充満する小さな空間で、わたしはきっと初めてを知る。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!煙草の匂いが呼び起こす、苦味と痛みが滲む重く忘れがたい追憶
この短編のレビューを書くにあたってまず特筆するのは、スマートで巧い文章だ。
昨今説明しすぎる作品が多い中で、さりげない仕草の描写で登場人物の背景を読み手に伝える文章は、活字を読む快感というものを思い出させてくれる。
登場人物のモノローグや台詞も、短くありふれた語彙でありながら、だからこそ胸に染み入る力のあるものばかりだ。
主人公は世界を疎み、世界に疎まれているように感じている一人の少女。公園に設置してあるトンネル状になった滑り台の下に逃げ場所を見つけた彼女は、煙草を喫う一人の女と出会う。主人公と同じく疎ましい何かから逃げてきたきた彼女と、煙草一本分の時間を日々繰り返す内に、主人公は世界と…続きを読む - ★★★ Excellent!!!一滴の思い出
登場人物がTシャツを着ていたから夏だろうか。
小さな縮こまったトンネルから土砂降る雨を覗く少女の前に、
ぶっきら棒な年上の女性が現れる。
狭いそのトンネルの中で過ごす二人だけの時間。
そんな場所だからこそ、互いに少しだけ、素直になれたのかも知れない。
そこに居たからこそ偶然ではなかったが、
そこに行ったからこその偶然の出会い。
長い人生の中で一瞬だけすれ違う、
そんな人物が少女に与えたものとは?
不思議な魅力を備えた女性と、
耳の不自由な少女。
遠く違って近しいもの。
まったりと、甘酸っぱいような、そんな心の交流の不思議なお話。
切々と、情緒豊かに語られる、上質な物語はいかがでしょう…続きを読む