「殺したい」はそこで「死んでいたい」

思春期のあれこれを通りすぎて変わっていく先輩と、それを留めたい後輩。殺したいのは「時間の流れ」。移ろい変わっていくものを、その息の根を止めてでも留めたい、そんな気持ちの表れなのかなと思いました。

会話の間の取り方、地の文で表現される言葉選びと想像力の豊かな「静寂」の描写がとても秀逸で、全5話あっという間に読ませて頂きました。

個人的にはこの後輩が言う「殺す」は三島由紀夫の最初期の散文『中世に於ける一殺人者の遺せる哲学的日記の抜萃』における「殺人」を彷彿とさせるものだと思いました。

三島が10代の前半にこれを書いたように多感な思春期だからこそ、強烈な愛着を表現する言葉が、死に近づいていく。

変わっていくこと許せないから、そのときのまま、時間を「殺したい」。本当は、そこで「死んでいたい」のではないかと思うのです。

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