人の目が、学校が死ぬほど嫌いな同志たちへ

あの子は綺麗な二重、あの子は重い一重。
あの子は明るい人気者、あの子は暗いオタク。

大人になった今から思えば、そんなことは、いろんな人がいるよね~程度のことなのですが、学生時代はそうではなかった。
スクールカーストの中で、己がどのような容姿と性格を持っているのかは死活問題でした。それは勝ち組のものと負け組のものとに単純化される。性格が暗い、容姿が地味、となれば、いじめられ虐げられることもある。死にたいと思うこともある。まさに死に関わるほどの大問題。

主人公のあきらさんは、友達の進くんとすごす時間が大好きです。
だけどある日、仲の良い女友達が「あの子と仲良くしない方がいいよ」と言ったことで、楽しい日常にひびが入ってしまいます。さらには彼の容姿や性格を貶す言葉を本人にも聞かれてしまって……。

彼の暗い性格も、厚ぼったい瞼も、あきらさんにとっては何も嫌ではない。むしろ好ましいものだっただろうに。
あきらさんの葛藤と悲しみ、進くんの抱えていたであろう苦悩。それらは、学校の閉塞的な集団生活が大嫌いだった自分になじみ深いものでした。

進くんには、自分をまるっと愛してくれるあきらさんという友達がいるのに。とても素敵なものを「持って」いるのに。それはきっと彼の人柄が得たもので、まぎれもなく彼が「持って」いる素晴らしい宝なのに。
それなのに彼が自己否定したことが悲しい。でもその気持ちも痛いほどわかります。己の学生時代と重なります。
いや、成人した今だって、自分は非社交的でのろまで、容姿だって小説の能力だってパッとしないと悩んでばかり。

そんな風に悩み続けて、何かいいことがあったかというと、あまりなかった気がします。むしろ、必要以上に怖気づいて、よく無力感に苛まれて、大切なときにも行動できなくて後悔してばかり。
他人との比較をするより、一度、冷静に客観的になって、自分の持っているものに目を向けたい……。
そんな気持ちにさせてくれるお話でした。

学校が、自分が、嫌で嫌で嫌で死にたいほど悩み続けた学生だったからこそ、このお話の中のメッセージを、自分と同じように悩んでいる若い方に伝えたく思いました。

今の自分は大人だから、「瞼なんて関係ない。思いやりのある人が好きだよ」「明るい暗いより自分と気が合うかどうかが大事。むしろ暗い人の方がちょっと好み」って思うし、そう進くんに言ってあげたい。
でも中高生の頃の自分にはできなかったと思う。たぶん言葉にできずに、恐怖とモヤモヤを抱えてオロオロするだけ。
もしもできることならば、そんなふうに世間の目ばかり気にする過去の自分にこのお話を読ませて、少しゆっくり考えてみて……と言ってみたかったなあ。