揺らぐ世。不確かになる自分軸。それを補強するべく心持ちが此処にある。

西行、大伴家持、黒田三郎、レイ・ブラッドベリ、吉行理恵。
以上の詩人(作家)には或る共通項があります。
それは何かって?
「後世に残る文章を書いた」ってこと。
もちろん正解。
では、その文章が生まれた背景に共通するものは何?
私の解答は「動かせない孤独」です。
孤独が詩人の心に張り付き、その孤独に手を焼くと云うよりは、孤独に寄り添い孤独を愛した背景が、行間に浮き沈みするのです。
遊井そわ香さまもまた孤独の系譜に存在を刻む創作者。
孤独の楽しさ、孤独の強さを知っている文學者です。

作者さま曰く、数秘学では孤独を「内なる創造性」「自分の内面を見つめ、魂の声を聞く」行為。
孤独を愛する人の推薦する藝術は、やさしくて、せつない。
その紹介文に付随する思想を追っておりますと、孤独を好もしく思う作者さまの優しさと強さが、同時に伝わってきます。一見、相反していますが、優しいことは強いことなのだと気付かせてくださいます。

そもそも「孤独」という単語には「暗い」だとか、「耐え難い」だとか、ネガティヴなイメージがつきまといがちだけど、そうではないのですね。
ただひたすらに暗い局面にこそ射す光があります。
光──それは自分の心の扉からこぼれる光が他者を照らすがゆえに射す光。
恐れることなく他者と繋がり、深く愛して楽しむことのできる世界を見出す時。
それが真に孤独を愛した時です。
迷ってもいい。無理に「いい人」を演じる必要もない。
ありのままの自分を認めて、弱さごと慈しめればいい。
自分の裡に燃ゆる愛と孤独の光が大きくなった時こそ、絆で繋がる他者と、確固とした自己と、逢遇を果たすことでしょう。

人間不信ならぬ自己不信からの脱却と云ったら大袈裟だけれど、さまざまな「当たり前」が崩れゆく世で、何を信じていいか分からなくなった日、最終的に信じられるのは自分です。頑なな心を柔らかくして、強く自由に、はぐくみましょう。
『青く、蒼すぎず、高くふかく』は、自分軸補強に最適です。是非どうぞ。

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